2005年6月アーカイブ

ダイロンの聖少女

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クラッシャージョウの新作。太陽系国家ゴーフリーは反乱を起こしてそのまま皇帝として君臨するルキアノスの独裁下にあった。しかしゴーフリーに来た人たちは地球にいたときの自治区ダイロンで、400年間に3人のネネトと呼ばれる一種のエスパーが出現したことを口伝しており、皇帝ルキアノスの出現と同時に新たなネネトが出現した。ネネトを擁する城塞都市ダイロンが衛星からの攻撃を受けたとき、ネネトが負傷を負い、その治療のために病院船への護衛を依頼されたのがジョウのチームであった。ネネトの力を自分のものにしようと欲するルキアノスは、宰相ガランドに開発させた最強のサイボーグ兵士ザックスを向かわせる。まんまとザックスの罠に落ちて囚われたジョウたちは衛星の秘密基地の闘技場で、ザックスと対戦する。絶対絶命と思われたとき、ネネトの力を受けたリッキーがネネトの力を受けて超能力を発揮するジョハルタになり、その超絶的な力でザックスを排除し、皇帝ルキアノスに迫る。いかにもクラッシャージョウらしいアクション活劇になっており安心して読める。

(「ダイロンの聖少女 クラッシャージョウ」高千穂遥著、ソノラマ文庫 1047、2005年5月発行、ISBN4-257-77047-3)

電波男

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タイトルから「電車男」の類の本かと勘違いしていたが、逆にその手の話に鉄槌を加える本であった。本文にも出てくるがオタキング岡田斗司夫の一連の本(「ぼくたちの洗脳社会」や「フロン」、「30独身女、どうよ!?」)あたりの後を、少し下の「萌え」世代の著者が書いたもの。内容は、バブル期以降に世の中を支配している「恋愛資本主義」の下では必然的に、イケメン?それに群がる女?あぶれた女?相手にされない男(キモメンやオタク)といった階層社会になっていることを指摘し、この物質主義の元で、飢餓状態に陥ると誰もが不幸にしかならないと論ずる。「負け犬の遠吠え」などの著者は、その不幸をオタクのせいにする言語道断の奴らである。この恋愛資本主義は近いうちに必ず崩壊する。そこから救われるには、「萌え」によって自分の脳内恋愛ができるオタクになることである。現実社会で受けた疎外感を脳内の「萌え」によって昇華することのできるオタクこそが新しいデジタル社会に適応できる人種であり(女性や幼女を襲う鬼畜は、こうした脳内昇華をせず、現実社会に恨みをむけた結果生じる)、2次元?(超えられない壁)?3次元という真理に到達したオタクたちこそが世界を変革すると説く。著者のオタクの主張満開だが、頻繁に出てくる?だYO。という言い方には最後までなじめなかった。

(「電波男」本田透著、三才ブックス、2005年3月発行、ISBN4-86199-002-5)

大森望によるSF作品の時評集の第1弾。前半は「小説奇想天外」誌のコラムだが、小説奇想天外は全巻そろって持ってるはずなのに、読んでも全く記憶に残ってない。後半は「本の雑誌」のコラムなので、ほとんど初見。大森望選の1975-1989のSFベストの一覧表や、1988年のSFマガジン掲載短編の星取り表、海外SF関係者の生年一覧表など役に立ちそうな表が随所に載せてある。大森望は1961年生まれとのことで私の4つ下なだけなので、感覚的にはほとんど同時代で、70年代にSFマガジンを読み始めて、というあたりはほとんど同じなので懐かしさ一杯であった。この巻では90年代中盤のいわゆる「SF冬の時代」あたりまでが収録してあるのだが、この時代のSFでは個人的な事情もあって買ったまま読んでない(本棚に並んでいる)SFが結構あることが判明。いつになったら読めるんだろう。秋には第2弾として回天編1996-2005が出るらしい。

(「現代SF 1500冊 乱闘編1975-1995」、大森望著、太田出版、2005年6月発行、ISBN4-87233-927-4)

昔なつかしい「軽シン」の続編?「軽シン」の主人公たちは年をとって40代?その息子世代の話になっている。相沢耕平と薫の息子薫平をはじめとする群像劇というのは前作と同じだし、やたら女にもててやりまくるのも同じだが、暴力的な抗争がかなり増えている気がするのは気のせいか?「軽シン」が埋もれててすぐには出てこないので確かめようがないが。この巻ではいきなり耕平の祖父のビルが死んだと言われても、ビルって誰?の世界だからなあ。だってそんな昔の話覚えてるわけないよなあ。他にも当時の登場人物がばんばん出てくるんだけど、すっかり忘れ果てている。まあ、あまり気にせず別物と思って読めばいいのかも。それよりあとがきを読むと作者もかなりやばい状況のようだが、果たして続くのか?

(「軽井沢シンドローム、episode5」たがみよしひさ著、ヤングチャンピオンコミックス、2005年6月発行、ISBN4-253-14775-5)

この巻ではいよいよ自分の肉体から切り離されたローダンの脳の彷徨が始まった。ローダンの脳が気づいたとき、周囲には同じようにケースに入った脳が多数あった。異銀河(ナウパウム銀河という名前だと後でわかる)のヤアンツァルという惑星の脳マーケットにいたのだ。異人の脳(サイナックと呼ばれる)を探していたパラ転送移植医ドインシュトに買われたローダンの脳は従者種族であるボルディンの一員テクトに移植される。ヤアンツァルでも有数の権力を持ち異人であるローダンにも理解を示すドインシュトだが、故郷銀河を探そうとするローダンは、ドインシュトのクリニックを抜け出し、追ってをまいてノパロールにある地下霊廟に逃げ込む。そこで偶然助けた脳マーケットの闇商人であるアナトムの助けで、ヤアンツァル一の宇宙観測センターであるドリクナシュにもぐりこむことに成功したローダンだが、他銀河の画像を探っていることを見つかり、かろうじて逃げ出して再びドインシュトのもとに戻ったところまでである。

(「ノパロールの地下霊廟」(ペリーローダン312)、W.フォルツ&C.ダールトン著、天沼春樹訳、ハヤカワ文庫SF1518、2005年6月発行、ISBN4-15-011518-4)

SFベスト201

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70年代以降2000年までのSFのガイドブック。伊藤典夫編で、編者以外の執筆者は51年生まれの高橋良平、森下一仁に、後は60年代生まれの大森望、尾之上俊彦、堺三保、中野善夫、中村融、三村美衣、山岸真の面々。年代的にはあまり違わない面々の選択したSFが並んでいるはずだがやはり好みの違いもあって読んでないのがだいぶあった。私がよく読んでいた時期とそうでない時期もあるしね。巻頭が新しい作品、巻末に向かって刊行が古い作品になるという並びになっている。70年代から82年3月という私の学生時代に対応する作品は、一番古い「スローターハウス5」から「ロードマークス」まで31作品。このうち読んでいたのは28ほどだからほとんど読んでる、さすが学生時代は時間があったんだなあ。82年4月から80年代末までは「鼠と竜のゲーム」から「戦闘マシーンソロ」まで65作品。このうち読んでいたのは23しかない、3分の1であり落ち込みが激しい。90年代は「侍女の物語」から「祈りの海」まで74作品。このうち読んでいたのは32作品、ちょっと盛り返したかな。「ハイペリオン」のように四部作とか3部作とかもあるので全部では多分201作品になるんだろう。読んでない作品でも面白そうなやつは買ったまま積読状態のが多いので、どこかで消費していくこととしよう。

(「SFベスト201」伊藤典夫編、新書館ハンドブックシリーズ、2005年6月発行、ISBN4-403-25084-X)

小松左京マガジン18号

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巻頭はイベントがらみが多い小松左京らしく、元小学館の日置氏と元東急エージェンシーの桑田氏を交えた対談。定期コラムは高齋氏がいつものように車・バイク関係で、今回はミレミリアについて。他には林氏の小松イベントについてと、櫛橋氏のバングラデシュの貧民層のこと。田中光二氏のシネマオデッセイは史劇関係。小松実のマンガの発掘は「天神祭マンガ絵巻」。小松研のページでは細谷氏がロボットと未来社会について。あとの大部分を占めるのは、堀晃氏による「小説T・P」(T・Pは昭和40年ころの大阪のファンクラブ)の前編と、パトリック・ハーラン氏による「人類裁判」の英訳版(その1)である。小松左京のインタビューは高橋和巳を語る。しかし、小松左京もだんだん老いていくのをみると何とか「虚無回廊」は完結してくれないか願う。日本漂流の方はかわぐちかいじの「太陽の黙示録」が継いでいるようなもんだから。

(「小松左京マガジン」イオ発行、角川春樹事務所発売、2005年4月発行、ISBN4-7584-1052-6)

エリ・エリ

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21世紀半ば、人類の多くは神の存在を信じることができず、キリスト教をはじめとする各宗教は衰退していた。東北地方で神父を務める榊も自身の信仰が揺らぐのを感じ酒に逃げるようになっていた。そこへ教皇からの誘いがあり、「神の科学的証明」による信仰回復の計画の誘われる。一方、このころ月や火星の恒久基地を経て、木星圏にも20万人規模のコロニーを築くにいたっていた人類は、SETIを進展させるため、他恒星に無人探査機を送る「ホメロス計画」を進めていた。ホメロス計画への参加を求められた物理学者・脳外科医のクレメンタインは木星圏のアヴァロン群島で計画を進める。そこへ太陽系に進入してくる巨大な異星船が発見されるが、ニュートリノと重力波を撒き散らすその船は電波には応答しようとしない。何とか接触をこころみる人類だが、SETIへの反対派のテロ計画が思わぬ方向へ行き、異星船は加速して太陽系を去る。テロ事件で体を失った榊は、アヴァロン群島でクレメンタインによって脳だけの存在として生き続け、当初の計画に沿って神を確認するために、ホメロスIに載って異星船の去った方角へ追いかける旅に出るのだった。小松左京賞受賞もうなずける宇宙と神の存在に切り込んだ作品となっている。一抹の希望を持たせるエピローグもいい感じである。

(「エリ・エリ」平谷美樹著、ハルキ文庫、2005年5月発行、ISBN4-7584-3173-6)

よくわかる現代魔法シリーズの5巻。前巻で姉原美鎖死す、という衝撃のむすびだったので、どうなるかと思ったが、何とか復活できたようである。今回は電子の魔都、秋葉原を舞台に、魔女のライブラリをめぐって、こよみ・聡史郎・嘉穂と弓子たちがゲーリー・ホアンとゴーストスクリプトのギバルテスが対決する。ついに弓子の体に甦った大魔女ジギタリスがふたたび世に出ようとするのを、何とかして阻止しようとするこよみたちの奮闘。聡史郎の特異体質が思わぬところで役にたち、結果的にはめでたしめでたしになって「魔女のライブラリ編」も一件落着らしい。7月には次の巻が出る予定とのことなので、次なる展開を期待したい。

(「よくわかる現代魔法?たったひとつじゃない冴えたやりかた」桜坂洋著、集英社スーパーダッシュ文庫、2005年5月発行、ISBN4-08-630236-5)

ダーク・ピットシリーズの新作。前作で突然息子と娘が出てきたりするし、このところカッスラーの作品というとP.ケンプレコスとのNUMAファイルシリーズだったりしたので、もう書く力がなくなってきたのかと思っていたが、ちょっと復活といったところ。中米沖の大西洋で正体不明の汚濁が現れる。裏には謎の組織「オデッセイ」のCEOスペクターと中国の影がある。ピットたちの活躍で謎の一部が明らかにされるが、それはヨーロッパとアメリカを氷河期に導きかねない陰謀の姿であった。というのが縦糸で、それにトロイア戦争とオデッセウスの冒険にまつわる謎がからむ。話のスケールは昔のピットシリーズを彷彿とさせるが、ふしぶしに以前ほどの派手な立ち回りが感じられず、結末ではピットの結婚と、サンデッカーの後をついでNUMAの長官就任か、というような話もでており、カッスラー自身の長男との合作と伝えられる未訳の最新作がどうなっているのかが気にかかる。

(「オデッセイの脅威を暴け」クライブ・カッスラー著、中山善之訳、新潮文庫、2005年5月発行、ISBN4-10-2170365-9,4-10-217036-7)

マーティンの連作集。「宇宙一あこぎな商人タフ」の活躍を描く。1.禍つ星には、表題作、「パンと魚」、「守護者」を収録、2.天の果実には「タフ再臨」、「魔獣売ります」、「わが名はモーセ」、「天の果実」が収録されている。このうち「禍つ星」と「魔獣売ります」「わが名はモーセ」はSFマガジンに訳載されたときに読んだ記憶があったが再読しても面白かった。「パンと魚」、「タフ再臨」、「天の果実」の3作は連作中の3部作を構成している<鋼鉄のウィドウ>トリ・ミューンの出てくるシリーズとなっている。個人的にはタフが方舟(実は古の地球連邦帝国の環境エンジニアリング兵団(ECC)の生物戦争用の超巨大播種船である)を手に入れた顛末を描いた「禍つ星」や「魔獣売ります」あたりがおすすめ。2冊ではもったいない。同じ設定でまだまだ書けそうだし、作者もその気がありそうなので、是非続きを書いて欲しいものである。

(「タフの方舟1.禍つ星、2.天の果実」ジョージ・R・R・マーティン作、酒井昭伸訳、ハヤカワ文庫SF1511,1516、2005年4,5月発行、ISBN4-15-011511-7,4-15-011516-8)

SFマガジン2005年7月号

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特集は「ぼくたちのリアル、フィクション2」。ラインナップは、古代スパルタの盛衰と電網の中でジーンのやりとりをする少女たちの姿を描いた「アンジー・クレイマーにさよならを」新城カズマ、さいたまチェーンソー少女の続編「遊星からのカチョーフウゲツ」桜坂洋、死んだ叔父の野天人の後妻の通夜で少女が思うことを描く「野天の人」平山瑞穂、近未来にレシプロのバイクを駆る少女が出会った魔女は零式で公爵の元を脱出しようとするが、、「零式(前編)」といったところ。他にはコミックス「宇宙色のブーケ」西島大介、連載「罪火大戦ジャン・ゴーレ」田中啓文と「霊峰の門」谷甲州。巻末に2005リアル・フィクションガイド44として特集関係のブックガイド。一番面白かったのは零式だが前編だけなので完結を待つ。

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