PAD病による銀河の知性体滅亡を回避しようと時間パラドックスをしかけたローダンたちは時間線改変の影響に困惑しながらも何とか目的を達しローダン?を倒すことに成功し、元の宇宙に戻ってPAD病がはじまらないことを確認する。しかし今回の事件の背後に超越知性体「それ」と「反それ」の間の闘争があることに気づいたローダンたちは遠からず新たな試練に直面することを予感する。後半では時間パラドックスを惹起して人類をすくったコル・ミモことパラアブストラクト数学論理学者マルコル・デ・ラパルが突然ローダンに対して敵意をむき出しにする。南極大陸のゼロ時間デフォルメーターにマルコルを追ったローダンは罠にかかり、脳だけを摘出され宇宙の彼方に飛ばされる。残ったのはアンドロイド脳に入れ替わったローダンであった。後半の突然のキャラクタの変性やサイモンライトみたいな脳の放浪という頭の痛くなるような展開はどこにいくのか?
(「盗まれた脳(ペリーローダン311)」H・G・エーヴェルス&ハンス・クナイフェル著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1514、2005年5月発行、ISBN4-15-011514-1)
2005年5月アーカイブ
軽いアクションものって感じなので、ちょっと読んでみた。地球帝国航宙軍を事情で退役したあと、賞金稼ぎのバウンティハンターとしてある賞金首を追ってしとめたマッケイドは、旧知の航宙軍情報部大佐ピアスから、失踪したブリッジャー大佐の行方をつきとめる仕事を持ちかけられる。やむおえず引き受けたマッケイドは情報部大尉ローリー、航宙軍宙兵隊伍長エイモスらと共にブリッジャーを追う。背景には連邦制の崩壊後に成立した地球帝国と対立する異星人イル・ローン人、両者の間の辺境空域とそこで暗躍する宙賊たち、といういかにもの設定がある。ヒロインかと思ったキャラがあっというまにいなくなったり、後半で出てくる奴隷惑星の支配種族が宮廷調でしゃべりだしたり、とちょっとはずれる部分はあるが、ほぼストレートな話で結末に至る。もうちょっと最後ははでな謎ときでもあればよかったんだが。原作はシリーズ化されているというが、同じ作者の戦闘機甲兵団レギオンもシリーズになってるのに2巻以降が出てないし、どうなることか。
(「天空の秘宝」ウィリアム・C・ディーツ著、斉藤伯好訳、ハヤカワ文庫SF1510、2005年5月発行、ISBN4-15-011510-9)
秋山瑞人の描く切ないラブストーリー。基地の町の園原中学校2年・浅羽直之は、所属の新聞部の先輩に引き込まれUFO観測で終わった夏休みの最後の日、学校のプールに忍び込む。そこで偶然遭遇した手首に金属球を埋め込まれた謎の少女は、次の日転入生として教室に現れ、伊里野加奈と名乗った。園原基地から通う伊里野は、大量の薬を持ち、しょっちゅう鼻血を流し、毎日のように呼び出されて基地に帰って行く上、周囲の生徒を寄せ付けようとしない。そんな中、浅羽は空襲警報の訓練を本物と間違えた伊里野と防空シェルターに閉じ込められたりしながら伊里野を新聞部に誘いいれたり、水前寺先輩の指示で、映画館でのデートに誘い出したりし、次第に伊里野の謎に引き込まれていく。異常な盛り上がりの学園祭もすぎ、浅羽と伊里野の関係に複雑な想いを持つ同級生兼新聞部の須藤晶穂は、中華料理店の鉄人屋での伊里野との壮絶なバトルを経て、次第に伊里野とも打ち解けていく。しかし、突然園原基地近辺で起こった謎の爆発を契機に、戦時体制に移行した基地周辺は緊迫の度合いを増し、ボーリング場から強引に基地に連れ戻された伊里野が次に学校に現れた時、その髪は真っ白になっていた。伊里屋の視力にも障害があることに気づいた浅羽は、保健の先生として学校にもぐりこんでいる椎名真由美を問い詰め、伊里野がUFOと誤認されることもある戦闘機ブラックマンタのパイロットであることを確認する。既にパイロットとして必要な薬などで体がボロボロになっている伊里野を救うために、伊里野をつれて逃亡を図る浅羽。逃避行の途中、自分のふがいなさについ突き放すような発言をしてしまった浅羽の言葉に、ついに伊里屋の精神は壊れて、過去に退行してしまう。行き着いたおじいちゃんの家で伊里野は基地からの迎えの榎本とエイリアンとの最終決戦のために戻っていく。最終決戦のはずの日、一般の人には「北」との戦争と報道されていた今回の事変は突然の終戦の報道できりがついたように見えた。学校に戻った浅羽の元に突然軍からの迎えが来、連れて行かれた先の空母タイコンデロガでは出撃を拒否する伊里野がいた。伊里野を助けるためなら人類が滅びてもいいと決意して「伊里野が好きだ」と告げた浅羽の発言は、しかし、榎本のもくろみどおり、伊里野の気持ちを「浅羽のためなら死んでもいい」という想いに変え、伊里野は最終決戦に出撃していく。
一見、現代の日本とも見えながら、「北」との緊迫した状況が続くもうひとつの日本を舞台に、ディーンドライブやUFOに関係する事件が大量に入れ込まれたりしているが、ストーリーは切り札的な兵器に密接に結びついた謎の14歳少女という、「エヴァンゲリオン」や「最終兵器彼女」などの先行作を底流にもったラブストーリーである。ほろ苦い結末は同じ作者の「猫の地球儀」にも似たテイストである。「猫の地球儀」でも楽(かぐら)の死に狂う焔(ほむら)や最後に地球へ突入していく幽(かすか)の顛末は明かされないまま終わっているが、今作でも、エピローグは平穏な日常が戻ったようにも思えるが、伊里野の最後の戦いが功を奏したのか、伊里野が死んだのか生き残ったのか、といった点は明らかにされないまま終わる。主人公の浅羽の心には伊里野が残っていることを暗示しながらの結末はほろ苦いものとなっている。最後の4巻は人のいないところで読もう。
(「イリヤの空、UFOの夏」1,2,3,4 秋山瑞人著、メディアワークス電撃文庫、2001年10月?2003年8月発行、ISBN4-8402-1944-3,4-8402-1973-7,4-8402-2173-1,4-8402-2431-5)
時間SFの秀作と聞いていた高畑京一郎の作品。主人公の鹿島翔香は、ふと気づくと同級生の若松和彦とキスしていた自分に気づく。状況がつかめないままに部屋を出た翔香が階段から落ちた後、気づいたのは自室のベッドの下であった。夢かと不思議がる翔香だが、学校へ行って、その日が火曜日であることが判明し、月曜の記憶がなくなっていることに愕然とする。その後も植木鉢が落ちてきたり、階段で転倒したり、危機が起こるたびに別の日付と時間に突然いる自分に気づき混乱する翔香は、書いた覚えのない日記(筆跡は自分)の記述に従い、同じクラスの秀才、和彦に相談する。最初は信じようとしない和彦だが、そのうち意識が時間を跳ぶ「タイム・リープ」と呼ぶべき現象に翔香が巻き込まれていると突き止める。和彦のアドバイスに従って、意識の空白時間を埋めていく翔香だが、最後のピースを埋めるには過酷な事実に向き合う必要があった。時間線を前後するストーリーが最後にはパズルのピースをはめ込むように落ち着き、気持ちよく読み終えられる。巻末の「あとがきがわりに」にはその後の和彦が登場し、掌編SFの趣もある。
(「タイム・リープ(上・下)」高畑京一郎著、メディアワークス電撃文庫、1997年1月発行、ISBN4-8402-0558-2,4-8402-0559-0)
マンガ家の長谷川裕一へのインタビューをもとに、オタクとSFの関係についての稲葉振一郎の論考集。第1章が長谷川裕一とのインタビュー集、第2章がそれらをもとにした長谷川裕一論、第3章が長谷川裕一の作品解題とオタク・SF関係の年表、という構成になっている。そもそも長谷川裕一の作品をあまり読んでないのが問題だし、主要な話題の1つになっているガンダムにしても、ファーストガンダムこそ見ているが、その後のシリーズはあまりフォローできてないからなあ(3章の作品解題を見ると、ある程度読んでるのが「マップス」くらいしかなかった)。まあ、その割には中身はある程度読むことができたし、太田出版のこの手の本は細かい注がつけてあって、好きな部類に入る(参考文献に上げてある「海洋堂クロニクル」なんかはもっとすごかったが)。著者の稲葉氏は私の6つ下、俎上の長谷川氏は4つ下、とのことなので、似たような世代(作中ではオタク第一世代としてあるが)なので、そのへんで思い当たる節がいろいろあるからかもしれない。
(「オタクの遺伝子」稲葉振一郎著、太田出版、2005年3月発行、ISBN4-87233-869-3)
ローダンシリーズの「銀河のチェス」サイクルも地球滅亡寸前までいき、何とか事態を解決しようと、PAD免疫者であるコル・ミモは時間を遡って時間パラドックスを起こすことで現在の絶望的な状況をひっくり返そうとする。時間旅行のためのゼロ時間デフォルメーターは科学者グループであるラパリストがひそかに建造したものがあるはずで、ラパリストの惑星アルケミストで知性を持つ植物相手に奮闘の結果、何とかゼロ時間デフォルメーターを奪取する。後半では南極に持ち帰ったゼロ時間デフォルメーターで時間を遡り、途中間違ってナポレオン時代を経て、何とかマルコポーロがニューガス反応実験を開始する前の時点にたどりつく。マルコポーロの出発直前にひそかにもぐりこんだ面々は、必要な時間パラドックスのために並行宇宙でローダンが反ローダンとの直接対決に赴く直前にローダンの前に姿を現し、PADで絶滅寸前の銀河の状況を語り、未来を変えるために必要な変更をローダンに伝える。この巻から新たな訳者陣が加わり、これなら月間におまけを+することもできるのでは?巻末には公会議サイクルの始まる325巻までの仮題が収録されている。
(「時間遠征(ペリーローダン310)」マール&ヴルチェク著、五十嵐洋・青山茜・他訳、ハヤカワ文庫SF1509、2005年4月発行、ISBN4-15-011509-5)
柳田理科雄のシリーズ。内容は相変わらずだが、「巨人の星」「あしたのジョー」「宇宙戦艦ヤマト」といった筆者の年代ならリアルタイムで楽しんでいたような作品から(筆者は私より4歳下である)、「金色のガッシュ」「鋼の錬金術師」「Get Backers 奪還屋」「勇牛」といった最近の作品も加わっている。他の作品としては、「江戸前の旬」「なんと孫六」「エア・ギア」「谷仮面」「HAPPY!」「らんま1/2」「よいこ」「すすめ!!パイレーツ」「かってに改蔵」「ソーダむらの村長さん」「イブニングパブ・のこりび」「嗚呼どす恋ジゴロ」「高校鉄拳伝タフ」「夕やけ番長」「出番だ!ベビー」「クニミツの政」「うしおととら」「プニャリン」「め組の大吾」「米吐き娘」「火星人刑事」「鉄鍋のジャン!」「天下無双」「絶体絶命でんじゃらすじーさん」「猿ロック」「黒衣」「奇跡の少年」「ぽちょむきん」。情熱の熱力学などと章分けしてあるが、内容との関係はほとんどない。
(「空想科学漫画読本4」柳田理科雄著、日本文芸社、2005年3月発行、ISBN4-537-25266-9)
東本昌平の近未来バイクマンガの4巻。アジトをつきとめられ地下のグループのところに合流したノブたち。CBナナハンを作ってどうするのか問うキモサベに「本物の空の下を走りたいのよ!」と答えるノブ。このあたりがノブたちの本音なんだろうが、周囲の状況は次第に剣呑なものになっていく。モラと共に都心部に乗り入れていたジュンの目の前でビルに仕掛けられた爆弾が爆発。この機会に当局は”バイクテロ”と称して、バイク乗りたちも包囲していこうとする。テロの犯人一味にはジュンの兄ザキツもいて、ジュンたちに関心を示しだす。一方ノブはついにCBナナハンを組み上げ、感激するデイブと共に試験走行をするが、ピストンの焼きつきを起こし対策に頭を悩ます。
グイン・サーガ100巻達成記念号。グイン・サーガは当初100巻完結という話だったので静観していたが、まだまだ終わりそうにない。この分では老後の楽しみとするしかないようだ。今号には外伝として「鏡の国の騎士、第2話、闇の女王」が掲載されている。もうひとつの特集はスプロール・フィクション?。前の特集でも感じたが、どうもこの手のスプロール・フィクションてのは私の趣味には合わないようだ。この特集に属するのは、異形のテネシー州を舞台にしたクリストファー・ロウ「志願兵の州」、異形の彫刻家の話ベンジャミン・ローゼンバウム「抱擁もて新しきもの迎える神」、だんだn新しくなるように見える家を扱ったリチャード・バトラー「未来の家」、でどれも奇妙な味の作品。他には連載の田中啓文「罪火大戦ジャンゴーレ」、山田正紀「イリュミナシオン」といったところ。
