ふくやまけいこが「なかよし」に連載していた作品。帯にある「空想科学少女マンガ」というのがまさにピッタリ。主人公のるるちゃんは科学者のパパと一緒に星の島にやってくる。そこには不思議な犬フーポワ(実は異星人)、機械ずきの郎太、お金持ちのタフィーちゃん、力持ちのエリーちゃん(実は、ロボット)といった個性的な同級生たちがいて、持ち前の明るさで友達になっていく。しかし、島にはいろいろな秘密があるようで、石竜の子供メロンちゃんや転校してきた天才少女歌手パピルスちゃんとお供のロボット、スフィンクスなども交えて、いろいろな騒動や冒険が繰り広げられる。最後のエピソードが描き下ろしてあり、さわやかな読後感をもつことができる。
(「星の島のるるちゃん、1,2」ふくやまけいこ著、ハヤカワコミック文庫、2005年3,4月発行、ISBN4-15-030785-7,4-15-030791-1)
2005年4月アーカイブ
学校を出よう!シリーズの5巻と6巻は続き物である。3巻で登場した蒼ノ木類がまたも事件に遭遇する。ある朝起きてみるとルームメイトが息をしていない。あわてた類は茉衣子に泣きつく。現場を確認した茉衣子は真琴を訪ね、他の寮でも同様の事件が起こっていることを知る。しかも一見「死体」に見える生徒たちの体は温かいままで、生きているとも死んでいるともいえない状態だと判明する。学園内を調査してすでに女子寮D棟はほとんどの生徒が「死体」化していることがわかるが、夜になって類のルームメイトの日世子が類の血を吸おうと襲ってきたことから、「死体」と見られた生徒達は吸血鬼化していることがわかる。事件の究明に向けて真琴は超能力を持たない一般人は吸血鬼化しないことから、佳由季と特殊な能力をもつ祈、第二EMPからの助っ人、那岐鳥を吸血鬼の巣になっているD棟に送り出す。一方で宮野は事件の背景をさぐるうちに3巻で登場した並行世界を含む上位世界との関係にまで思考を伸ばしていく。6巻では若菜まで吸血鬼化し、真琴の首にも吸血痕が出るに及んで第三EMPは崩壊の瀬戸際に立つが、結末にいたって真琴が優弥にたいしてめぐらせた罠が判明し事態は一見無事に収拾する。第3巻でも登場した<インターセプタ>(年表干渉者、実は2巻で出てきたキーキャラクタ)、<インスペクタ>(高等監察院)に、<アスタリスク>(自動干渉機)を交えた上位世界でのエピソードが幕間にはさまり、物語を裏から操り、重層的な物語構造を見せる。
(「学校を出よう!5,6」谷川流著、メディアワークス電撃文庫、2004年9,10月発行、ISBN4-8402-2781-0,4-8402-2828-0)
学校を出よう!の第4弾。この巻では、何となく自分の居場所に違和感を覚えた少女、仲嶋数花が家出を決意するところから始まる。実はこれが世界をゆるがす大事件の発端であった。第三EMP学園では、真琴から仲嶋数花の拉致の命を受けた宮野・茉衣子ペアが出動するが、第一、第二EMP学園からも同じ人物を追う追っ手がかかっており、熾烈な競争が始まる。第一EMPの不気味な人形使い、第二EMPの能力者ペアに対し、宮野・茉衣子はどう立ち向かうのか。何となく第二との共闘のような形になったあとの、第二の加速能力者、蜩と第一の能力者の操る人形の壮絶なバトルは見ものである。宮野が事件の背後に関して論じるとおり、並行宇宙の間の遷移がからみ、大がかりなストーリー展開となる。結局、並行宇宙#256の数花の持つ世界破壊因子は、#139の真琴や#-91の優弥の活躍で、#-91の数花の弟、七海によって中和され、世界は救われるが、謎の<インスペクタ>の存在は次の巻のさらに大きな物語の背景につながっていく。
(「学校を出よう!4」谷川流著、メディアワークス電撃文庫、2004年3月発行、ISBN4-8402-2632-6)
学校を出よう!の第3弾。第三EMP学園の女子寮生の類は同室の侑里が突然消えたことに動揺し、生徒会書記の真琴を訪ねるが、妖撃部に回され、話を聞くことになったのは茉衣子だった。そのうち事態は急展開し、学内に多数のドッペルゲンガーが現われる。どうやら心に思う人物のドッペルゲンガーが出現しているようで、茉衣子も自分と見分けのつかないのが現われたばかりか、ひそかな人気者である茉衣子を思った人物は多かったらしく、何十人もの自分と同じ人物(?)に出くわしてしまう。はたして事態を収拾することはできるのか、というのがおおまかなストーリー。第1、2巻ではメインの主人公が変わったが、この巻ではいままで脇役的に出ていた光明寺茉衣子が主人公と言っていいくらい出ずっぱりであり、だんだんキャラがたってきたようだ。しかし、この巻までは、まだ超能力学園ものでも通るが次巻からはさらに意外な展開に。
(「学校を出よう!3」谷川流著、メディアワークス電撃文庫、2003年10月発行、ISBN4-8402-2486-2)
学校を出よう!シリーズの2巻。同じ主人公が出てくるのかと思いきや、一見全然関係なさそうな話に。主人公の神田健一郎は突然雨の中に立っている自分に気づく。しかも手には血にまみれたナイフが。動転して自室に帰ると、そこにいたのはまぎれもなくもう一人の自分。というわけではじまる神田Aと神田Bの騒動。困った2人は超常現象研究会のクラスメートの女の子星野をたずねる。事態の解明を進めていく中で、美少女誘拐事件もからみ、乗り込んだ倉庫に現れたのは1巻でも登場した対魔班の宮野と茉衣子であった。結局時間操作能力を発現した少女のからむ複雑なタイムスリップ事件であった。2人を助ける星野サナエが何となく「ハルヒ」シリーズの長門的な役割に見えてくる。今回の結末はちょっと救いのある余韻を残した終わり方であった。
(「学校を出よう!2」谷川流著、メディアワークス電撃文庫、2003年8月発行、ISBN4-8402-2433-1)
谷川流のもうひとつのシリーズ。この世界では十代で超能力を発現する事例が日本で起きており、超能力の発現が終了する20才前後まで彼らを隔離した環境に置くためにEMP学園という学校がある。主人公は第3EMP学園で寮長をやらされているが、本人は普通人なのに入れられているのは死亡した妹が幽霊となってとりついているから。超能力者を集めた中でも特に変人たちにあたる生徒会書記の真琴、対魔班長の宮野と班員の光明寺茉衣子に謎の生徒会長などなど、いろいろとクセのある連中の中で弄ばれる主人公。そこに、学内だけでなく外部でも妖魔の活動が激しくなってくる。この現象の原因は何か、物語は結末に向かって突進する。しかし、幽霊の妹、春奈が最後にはあのようにあるとは思わなかった。ちょっとほろ苦い結末が以外であったが、やはり読ませる話である。
(「学校を出よう!」谷川流著、メディアワークス電撃文庫、2003年6月発行、ISBN4-8402-2355-6)
特集はニュー・ウィアード・エイジ。英国SFの新潮流ということだけど、結局まともに根付いたと断言はできないみたいだなあ。特集に属する短編としては、ニール・ゲイマン「エメラルド色の習作」は題名からわかるとおりのホームズ物にラブクラフトの設定を入れたもの、ジョン・コートネイ・グリムウッド「樅の木食堂で朝食を」は人格転移もの、リズ・ウィリアムズ「暗黒の晩餐会」は異星人の暗黒の支配下のパリを舞台にしたもの、ニール・アッシャー「帰休兵」は町のチンピラと女のトラブルに帰休中のハイテク装備の兵がからんだ話。いずれも面白く読めたが全体を通して名前がつくものかどうかはよくわからない。浅倉久志セレクションはちょっと当たらし目のジェイジー・カー「ウェブ・ライダー」は1985年の作品ということで、ウェブとはいっても現在のインターネットのウェブではなく、宇宙空間を貫いて転移する能力を持つ者をウェブ・ライダーと呼んでいる。機械的なものではなく個人の能力によるという点を除けばハイペリオンシリーズのウェブみたいなもんか。田中啓文の連載はいつもどおり、単発で山本弘「メデューサの呪文」は珍しい言語SF。山本弘の作品はこちらの趣味に合うものが多く近作も面白かった。深堀骨「シンクロナイズド坂」、不条理ものになるんだろうけど、趣味に合わず。
吾妻ひでおの新作と言っていいのかどうか。89年に突然失踪して以来の顛末を「まんが」として綴ったもの。内容は最初の失踪時の記述である「夜を歩く」、92年の失踪、ガテン(ガス工事屋)の時代を描いた「街を歩く」、そして97年からのアル中で入院した時の顛末(の前半)を描いた「アル中病棟」。巻末にはとりみきとの対談。いろいろと断片的には聞いていたここ十数年の軌跡がわかって、それだけでも価値があるが、それだけではなく、ちゃんと「まんが」作品としての体裁になっているし、しかもそれが読んで面白い(いや、内容を考えるとそうとう悲惨なはずなのに)。アル中で入院していた時期の話はまだ半分くらいなので、続編を是非出して欲しいものである。現在は完全に立ち直っているのだろうか?是非継続して作品を発表してもらいたいものであるが。
(「失踪日記」吾妻ひでお著、イースト・プレス、2005年3月発行、ISBN4-87257-533-4)
涼宮ハルヒシリーズの6巻目。この巻も短編集だが、前巻までのエピソードの隙間を埋める作品が集まっている。文化祭当日のハルヒ+長門が飛び入り参加したライブのエピソード「ライブアライブ」。文化祭で上映されたSOS団製作の映画「朝比奈ミクルの冒険Episode00」。長門に一目ぼれしたキョンの中学校時の同級生の話「ヒトメボレLOVER」。雪山遭難事件後の山荘でのミステリイベント「猫はどこへ行った?」、といったところ。どちらかというと大ネタはなくて小粒のエピソード群という感じである。最後のエピソード「朝比奈みくるの憂鬱」だけが時間的に3学期になってからのもので、未来からの指令の意味を十分に知らされることなく任務を実行せざるを得ない自分を憂う朝比奈さんと相変わらずそれに巻き込まれるキョン、任務の一部として事故から助けられた少年などが将来の伏線になりそうだ。次はやっぱり例の過去への遡行エピソードを長編で、ということかな?いずれにせよこのペースで書けるのはすごい。
(「涼宮ハルヒの動揺」谷川流著、角川スニーカー文庫、2005年4月発行、ISBN4-04-429206-X)
地震が起こったからというわけではないが、昨年出た作品だけど今頃読んでみた。設定は近隣恒星に植民地を広げ繁栄していた人類が植民星との戦争により地球が失われ、やっと往年の力を取り戻しつつある時代、戦争後の暗黒時代をうまく乗り切った星系は力をつけて列強諸国を形成している。舞台となる惑星レンカはやっと惑星統一を果たした後進国でありこれから宇宙へ乗り出そうとしているところに、首都トレンカを巨大地震が襲う。国家中枢機能が破壊され数十万の命が失われた災害に、官僚としての立場で立ち向かおうとする青年セイオと、皇王の血統の唯一の生き残りとして摂政の地位についた少女スミルたちが、首相のサイテンや陸軍の暗躍に悩みながら、災害復興にどう立ち向かっていくかが描かれる。巨大地震の正体(ちゃんとSF的な原因がある)や、それに関係して予想された第2次災害などの困難にどう立ち向かっていくかの記述は読み応え十分である。主人公2人のペアだけでなくサブキャラである天軍士官の青年ソレンスとスミルの侍女サユカのペアも含めて、極限的な状況の中で、次第に理解を深め合う様はなかなか感動的でもある。「SFが読みたい」では国内第3位だったが、間違いなくおすすめの作品である。
(「復活の地 I、II、III」小川一水著、ハヤカワ文庫JA 761,766,770、2004年6,8,10月発行、ISBN4-15-030761-X,4-15-030766-0,4-15-030770-9)
