超光速通信が開発され近隣星系に植民地を築いていた人類は突如侵攻してきた異星人艦隊にシリウス、ウルフ、ラランデの植民地を殲滅され、ついに太陽系にも敵艦隊が迫る。圧倒的な戦力・技術力の差の前に対処法を探る人類はかろうじて捕獲した敵斥候艦からの情報を元に「敵のように考え敵になりきる」敵情調査班(アグレッサー・シックス)を編成する。4つの性を持ちクイーンを中心にドローン・ワーカー・犬からなる彼らは解決策を見出せるのか。というのが基本設定だが、わざわざ6人(?)編成にした意味があまり追求されないうちに、あれよあれよと敵の侵攻の理由や対処法がわかってしまい、そんなに安易に解決していいの、といううちに終わってしまう。超光速通信をアンシブルと呼んだり、末尾には年表や詳細な星系図を載っけたりして期待を持たせたわりには尻すぼみだなあ。続編があるそうだが、もうちょっとそのへんが追求されるのだろうか?
(「アグレッサー・シックス」ウィル・マッカーシイ著、冬川亘訳、ハヤカワ文庫SF 1507、2005年3月発行、ISBN4-15-011507-9)
2005年3月アーカイブ
いつのまにか3巻が出ていた。中身は相変わらずで軽い読み物として読める連作短編集となっている。やっぱり女子高生妻という設定は軽ーく扱われるだけで深入りはなし。それでも3巻ともなると旦那との会話にも慣れてきた。物理おたくという設定だが、こちらもあまりそれらしくはないなあ。大掃除中に変な異星人たちが出てきたり(大掃除篇)、学内でスナイパーに出会ったり(スナイパー篇)、ファミレスで突然異星人の陪審員にさせられたり(喧嘩篇)、友人の不動産屋で死神が出てきたり(不動産屋篇)、異星人の戦闘シーンに色々な階層の神様(管理者)が現れたり(降臨篇)、学内で密輸屋に間違えられたり(密輸篇)、延々と続く廃墟の階層世界に紛れ込んだり(廃墟篇)、色々とやってくれます。廃墟篇は雰囲気としてはBLAMEみたいだけど、こっちは結局世界の構造が明かされてしまって決着がつく。まだまだ続きそう。
(「食卓にビールを3」小林めぐみ著、富士見ミステリー文庫、2005年2月発行、ISBN4-8291-6290-2)
SF Japan の新装号、今までの大きい版形から SFマガジンとかと同じ版形に小さくなっている。同時に今までの Vol.* という表記ではなく、2005 SPRING とかの表記になっている(不定期巻を強調してるのか?)恒例の日本SF大賞&新人賞の特集号。SF大賞は「イノセンス」だが残念ながら見ていない。選評を読むと、今までの業績も含めた功労賞的な意味合いがあるようだ。新人賞の方は照下土竜「ゴーディーサンディー」。この号には受賞作の前日譚に相当する短編「仏像士」が載っている。今号収録の作品の中ではまあまあ面白かった。特集では前号に引き続き憑依都市プロジェクトの第2弾。森奈津子「海で拾われた少年」、吉川良太郎「ピーターパン・ホームシック・ブルース」、皆川ゆか「空虚街」、廻央のコミック「メカニカルポリス#00」。徐々に憑依都市の実像がわかってきたが、吉川良太郎の作品はこのプロジェクトの作品で初めて面白かった、今号の収録作品でも一番である。その他は夢枕獏、森岡浩之、火浦功、清涼院流水の連載。火浦の作品はあいかわらず字数が少ない。山田正紀の「神狩り2」発刊記念トークも収録されている。でも徳間から3月に出るSFはハードカバー単行本ばかりだからなあ。創元・早川で育った身としては文庫で出てくれるのがいいんだが。
(SF Japan 2005 SPRING、徳間書店、2005年3月発行、ISBN4-19-861987-5)
ペリーローダンの309巻。前半の「ポジトロニクス争奪戦」は前巻からの続きで、ポスビの200の太陽の星を舞台に、おかしくなったポジトロニクスからポスビを構成するプラズマ本体を復帰させる戦いを描く。ティフラーらが持ち込んだアンドロペストの胞子を利用して何とかプラズマを助けることに成功する。後半の「反ホムンクの強襲」では前半の事件から一ヶ月ほどがすぎただけなのに、地球は末期症状を呈しており、ほとんどの人は無気力で生きる力すら失おうとしている。こうした状況のジャンプはローダンシリーズではよくあることだが、いかにも唐突である。主役はハイパー物理実験の事故で偶然PAD病に免疫を持つことになった男と、”反それ”から免疫者を抹殺する指令を受けたレトルト生物との戦いであり、結末は並行宇宙でのローダンのエピソードを元に古代の武器を利用した男が暗殺者を倒して、かろうじてPAD病に対抗する望みをつなぐ。
(「反ホムンクの強襲」クラーク・ダールトン&ハンス・クナイフェル著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF、2005年3月発行、ISBN4-15-011505-2)
アメリカ主導で進む月開発の中、各国の宇宙機関を統合して国際宇宙機関ISA(International Space Association)が発足する。その第1回総会が月で開催されるにあたって、日本代表として出席する池内理代子次官は佐渡で建設作業員として働く吾郎と再会する。月に到着して判明したのは、かつてのテロの責任を日本に負わせてEUと手打ちを測るアメリカの謀略であった。この窮状の打破を画策する理代子は自分が妊娠したことを知る。アメリカにとって始めての月で生まれる子供(ムーンチャイルド)は軍主導の開発にブレーキをかけられる恐れがあり、今や月司令官として実質上の月の支配者となったロストマンは理代子に堕胎すれば日本の負担について譲歩するという案を持ちかける。交渉の末、苦渋の決断をした理代子だが、譲歩を快く思わないISA長官と、ロストマンの部下ファトマは、理代子を罠にかけ、ひそかに強制堕胎をもくろむ。果たして理代子の子供に未来はあるのか?というのが10巻の内容である。ちょうどあぶないところで終わっているので早く次が読みたいものである。
(「MOON LIGHT MILE/9」太田垣康男著、小学館BIG COMICS、2005年3月発行、ISBN4-09-186260-8)
名作「めいわく荘の人々」のサブキャラであるオタク安川を主人公とした短編集。ヤングキングに連載してたそうだが全く知らなかったので出てるのに気づいてよかった。「めいわく荘の人々」はずいぶん前のような気がしてたら最終巻は1998年だそうで、6年くらいしかたってないのか、意外。この本では安川がオタクパワー満開で、いろいろな人(というか美女ばっかりなんだけど)に迷惑をかけまくる。OLの痴漢対策、編集者の取立ての手伝い(?)、ピザのデリバリーマシン改造、諜報員の手伝い(?)、駆け出し占い師の手伝い(?)、保育士さんの補助、盗撮捜査の補助、高校講師の手助け(?)、フィットネスのインストラクター補助、初めての一人暮らしの女性の手伝い(?)、といった数々の迷惑を披露する。中にはF.ブラウンの名作「闘技場」に捧げた短編もあり、こちらは最終エピソードにもかかわってくる(スタトレのTOSでもゴーン人のエピソードがありましたが)。元作品の主人公の坂本は名前がちらっと出てくるだけであるが、元作を偲びながらも、安川のエピソードの暴走ぶりが十分に楽しめる一作。
(「迷惑の人」五十嵐浩一著、ジャイブ・CR COMICS、2005年3月発行、ISBN4-86176-097-6)
「SFが読みたい!」の発行に合わせて、ベストSF2004の上位作家競作号。イーガンの「ひとりっ子」は量子コンピュータと多世界解釈をテーマにしたノヴェラだが主人公とその子供の問題にからめたイーガンらしい作品。飛浩隆の「空の園丁」は「廃園の天使」の続編の冒頭の抜粋。「廃園の天使」を読んでないのが痛いが、単独でも雰囲気を楽しめた。この2編がやはり一番良かった。後は神林長平の「罪なる方法、模型・模倣・消去」は考古意識工学者のコーパス・ジェイクのシリーズとのことだが以前の短編は(多分)読んでない。プリーストの「火葬」は途中で結末がわかってしまってあまり感心しなかった。ウィリスの「からさわぎ」は昔の筒井短編みたい?ウルフの「録音」も小編という感じ。田中啓文の連載は、田中らしいグチョグチョ描写満載である。あとは日本SF評論賞の公募のお知らせなど。
「よくわかる現代魔法」シリーズ作者の桜坂洋の単発作品。異星人の送り出した環境改造用のナノマシンによって作り出された生物「ギタイ」の侵攻にさらされた地球は後進国地帯の砂漠化が進行し、先進国は統合防疫軍を組織してかろうじて対抗している。遠隔兵器がほとんどきかないギタイは近接戦闘により屠るしかなく、バトルスーツに身を固めた装甲化歩兵の初年兵である主人公のキリヤは最初の戦闘で偶然特殊なギタイ(ギタイサーバ)を倒したことにより時間のループに巻き込まれ、初めての実戦に赴く前後30時間を繰り返すことになる。時間のループとはいえ、記憶は引き継がれるため、ループごとの経験が蓄積できることに気付いたキリヤは生き残るためにUS特殊部隊の精鋭リタの戦闘斧を使うバトルスタイルを吸収しようとする。150回を超えるループの後、キリヤはリタもまた同様の時間ループを経た上で多くのギタイを屠ってきたことを知る。共通の体験を持つリタと知り合うことにより、事態を突破できると期待したのもつかの間、キリヤの前にリタが告げた冷厳な事実。結末はかろうじて時間ループを抜けるも、唯一と思った相手を失わざるをえないほろ苦いラストとなる。ライトノベルらしくさっと読めるが十分に心に残るストーリーに仕上がっている、おすすめ。
(「All You Need Is Kill」桜坂洋著、集英社スーパーダッシュ文庫、2004年12月発行、ISBN4-08-630219-5)
基本的に2004年に出た各種SFのベストの集計。これを見ると自分がいかに読んでないかがわかる。国内SF:1位の「象られた力」は読もうと思って買ってるのにまだ読めてない、3位の「復活の地」も読むつもりではいるんだが、後は14位の「審判の日」は文庫になったら読みたいなあ。海外SF:1位の「万物理論」は文句はない、3位の「ふたりジャネット」、9位の「夜更けのエントロピー」、12位の「不思議のひと触れ」、18位の「願い星、叶い星」の奇想コレクションは買ってまだ読んでない(短編集なんで部分的には読んでるけど)、17位の「塵クジラの海」と18位の「遺伝子の使命」も同じ、6位の「SF雑誌の歴史」は面白かったがやはり続きが読みたい。10位の「ソラリス」は新訳版なので読みたい気はするんだが。サブジャンル別では、ライトノベルSF:「食卓にビールを」しか読んでない、ダーティペアは文庫になったらだな。伝奇アクション&異世界ファンタジー:「よくわかる現代魔法」くらい。海外ファンタジー:全滅。国内・海外ホラー:全滅。国内・海外ミステリ:全滅。文芸ノンフィクション:前述の「SF雑誌の歴史」くらい。科学ノンフィクション:「フューチャー・イズ・ワイルド」「生命の星・エウロパ」くらい。SFコミック:「プラネテス」「ブレーメン?」「砲神エグザクソン」「ムーン・ロスト」「PLUTO」このジャンルが一番読んでるかな。SF映画:「王の帰還」「アズカバンの囚人」の2本。SFアニメ:「スチームボーイ」だけだけどイマイチ。後は各社の今年の出版予定だが、「ブルーマーズ」はほんとに出るのか?頼んますよ創元さん。
(「SFが読みたい!2005年版」早川書房、2005年2月発行、ISBN4-15-208619-X)
ソウヤーのヒューゴー賞受賞作。クロマニヨン人が滅び、ネアンデルタール人が進化した並行宇宙と我々の宇宙を舞台に、並行宇宙の物理学者が量子コンピュータの実験中の事故で我々の宇宙に転移した顛末の話。こちら側ではネアンデルタールの専門家である遺伝学の女性教授とネアンデルタール物理学者の交流が主調であり、向こう側では失踪した物理学者をめぐって同僚の実験物理学者が殺人の嫌疑をかけられ裁判になるというソウヤーお得意の法廷ミステリの趣になっている。並行宇宙や量子コンピュータは出てくるが、あまりそれらの原理的なことには深入りせず、我々と異なるシステムのネアンデルタール社会と我々の社会の対比が主眼のようだが、ちゃんとネアンデルタール物理学者の主人公に感情移入できるし、ソウヤーらしく非常に読みやすいエンタテインメントになっている。サドベリーのニュートリノ観測所が舞台だったりするので専門分野からの興味も引かれた。3部作で続巻も年内に順次刊行される予定のようなので、楽しみである。この本はハヤカワ文庫SFの記念すべき1500番である(確か1000番は「2001年宇宙の旅」だったような)。
(「ホミニッド」ロバート・J・ソウヤー著、早川文庫SF、2005年2月発行、ISBN4-15-011500-1)
主人公は女子高生だが、人妻(学校ではないしょ)でもあり小説家でもある物理オタクという触れ込みのシリーズ。この設定なら女子高生かつ人妻ってだけでもいろいろとありそうだが、そっち関係の話は全然なく、女子高校生らしい日常の中で、やたらと色々な宇宙人(?)の遭遇し、騒動に巻き込まれる姿を描くエピソードばかりである。一話一話が短くてあっさりと結末がついてしまうので、物足りない気分である。2巻の最後のエピソードは多少長いが、それとても特に印象に残るわけではなかった。うーん、いくらライトノベルとはいえ、こうまであっさり味だとなあ。まあ、剣康之氏んのイラストはいかにも女子高生でいい感じなんだけど。
(「食卓にビールを」「食卓にビールを2」小林めぐみ著、富士見ミステリー文庫、2004年8月、10月発行、ISBN4-8291-6267-8,4-8291-6275-9)
