2005年2月アーカイブ

終戦のローレライ

| コメント(0)

映画に合わせて文庫になったのでやっと読むことができた。第2次大戦も終戦間近の日本近海が舞台。既に降伏したドイツから日本へ向けて脱出してきた潜水艦「UF4」に積まれた特殊兵器「ローレライ」の秘密を求めて執拗に追うアメリカの潜水艦とUF4の戦いがプロローグ。追っ手を何とか振り切ったUF4だが代償として、ローレライシステムのキーとなる特殊潜航艇「ナーバル」を切り離さざるをえなかった。入手したUF4に対してかねてよりの計画に利用しようとする軍令部の浅倉大佐は秘密裏に乗員を集め「伊507」となったUF4を自分の秘密計画のために出動させる。2巻では伊507がナーバルを回収しアメリカの追跡潜水艦を撃破する。この過程で明らかになるローレライシステムの正体は、ナーバルに乗っていたパウラという少女の超能力(特殊な感知能力)を核とした画期的な海中の3次元探知・表示装置であった。後半の3巻では、ウエーク島にたどりついた伊507が浅倉大佐からの出動命令に従って再度出撃するが、出港後明らかになった浅倉大佐の計画に否を唱えた折笠上工と絹見艦長、パウラの兄のフリッツ少尉たちが、乗り込んできていたアメリカのスパイや艦内の浅倉大佐の同調者たちから艦を奪い返す戦いを描く。そして最終巻では、東京に対する第3の原子爆弾の投下を阻止するため、テニアン島に向けて絶望的な戦いに挑む伊507が描かれる。ローレライシステムは「ソリトンの悪魔」のホロフォニクスソナーの超能力応用版みたいなもんだが、主人公の1人であるパウラの凛々しい姿と折笠の交流や、フリッツの心境の変化などが書き込まれ、各巻ごとに訪れるクライマックスにページをめくる手がもどかしかった。最後の終章がかなり長く、単なる余韻という以上に戦後の折笠とパウラの人生を俯瞰するが、そこで描かれる現代日本の姿は、浅倉大佐の懸念が現実化したようで先行きの不安が喚起される。最後に出てくるパウラの孫の弥生の姿が一抹の希望といったところか。伊507やナーバル、パウラのフィギュア付のバージョンも発売されるそうだが待ちきれなくて買ってしまったが十分に満足した。

(「終戦のローレライ」福井晴敏著、講談社文庫、2005年2月発行、ISBN4-06-274966-1,274971-8,275002-3,275003-1)

去年立て続けに出たライトノベル本のはしりかな?出たのは大分前なんだけど日経BPや宝島社の本に比べると近くの本屋になくて今頃読みました。内容はライトノベルと呼ばれる一群の小説群(レーベル群)を歴史的な流れを追いつつ、大森望・三村美衣の対談形式で追っていくもの(年表と作品紹介つき)。もうずいぶん前から本屋で大きな面積を占めてるライトノベルだけど、あまりに多すぎてどれから読んでいいのたらという状態なので、ここんとこしばらくはSFマガジンの書評欄で話題になってるものを探して挿絵が気に入れば買って読むってパターンになってます。まあライトノベルってのが中身の小説と挿絵が分かちがたく魅力を形成してるんで、こんな読み方するしかないのが現状ですが(当然全部目を通すなんてのは不可能だし)。この本でもほめられてるのに読んでないのが大分あるので、入手できる時に入手して読みきれなければ老後の楽しみとしましょうか。

(「ライトノベルめった斬り!」大森望・三村美衣著、太田出版、2004年12月発行、ISBN4-87233-904-5)

ペリーローダンの308巻。この巻ではアンドロメダへのPAD病の伝染を防ぐために、マークスを追ってルックアウトステーションに行ったティフラーたちの活躍が描かれている。前半では既にテラナー、マークス共にPADに侵されているルックアウトステーションを舞台に中立(のはずの)補助種族も交えての戦いが続く中、ミッドアウトステーションから偵察に来たマークス艦を説得して何とかPADに罹らないうちに引き返させることに成功し、残されていた戦艦で地球に帰還しようとする。後半になるとアンドロメダ外縁から受信した未知種族の信号がPADの影響で変異し、艦内の人間に感染して大混乱となる。その上この新ウイルスがプラスチック部品まで侵すことが判明し、艦が動けるうちにより近いポスビの200の太陽の星に進路変更するがPADに犯された乗員の反乱騒ぎまで起きる。はたして無事に目的地まで行き着けるのか?

(「アンドロ・ペスト」ウィリアム・フォルツ&H.G.エーヴェルス著、赤坂桃子訳、早川文庫SF、2005年2月発行、ISBN4-15-011502-8)

よくわかる現代魔法シリーズの4巻。以前の巻にも出てきたゲーリー・ホアンが姉原家からギバルデスの剣を盗み出し、ギバルデスの召還と伝説の魔法使いジギタリスの魔女のライブラリの秘密を入手しようと暗躍する。その舞台となるのが六本木のハイテクビル。このビルに1ヶ月前からこもっている少女笑は父親からもらったJavaリングのおかげでハイテクビルの電子機器に宿るjiniたちと会話しjiniを操ることでビル内での自由きままな生活を謳歌していたが、ホアンの出現でいやでも事件に巻き込まれていく。一方でホアンにおびきだされた姉原美鎖とその弟子こよみ、および友人の嘉穂はビルに潜入するがトラブルに巻き込まれ分断される。事件を察知したクリスティーナも参戦し事態は混迷を極める。この巻では防火扉に閉じ込められた嘉穂のハンドヘルドPCでの活躍も描かれるが、もうちょっと扱いが多くてもいいのにな。一方で屋上で戦う羽目になったクリスティーヌと美鎖だが、嘉穂たちの方が一件落着と思って、あとがきのさらに後を読むと、何だこの最後の引きは。こんな形で「つづく」にされるとは、続きをすぐに書いてくれるんだろうな。

(「よくわかる現代魔法 jini使い」桜坂洋著、集英社スーパーダッシュ文庫、2005年1月発行、ISBN4-08-630221-7)

赤川次郎の作品はそれほど読んでいるわけではないが、三毛猫ホームズのシリーズだけは最初からずっと読んでいる。最初は単に猫が主人公(?)ということで読み始めたわけだが、刑事が主役だけあって毎回殺人事件などが起こるにもかかわらず、軽い読み物として気楽に読めるのは利点であろう。この巻では5歳になる娘を殺された旧家の実業家の妻が、ふとしたことから知り合った霊媒に娘の霊を呼び出してもらい、娘を殺した犯人をつきとめようとする経緯を中心にストーリーが進んでいく。もう41冊目にもなるが、主役の片山刑事兄妹と猫のホームズ、同僚刑事の石津といった面々は全然変わらない。まあ、このあたりの安心感も長続きする原因なんだろうけど。

(「三毛猫ホームズの降霊会」赤川次郎著、光文社カッパノベルズ、2005年1月発行、ISBN4-334-07600-9)

小松左京マガジン17号

| コメント(0)

あまり一般書店で出回っていないが、イオ企画から出ている季刊の雑誌である小松左京マガジンも5年目に突入して17号となった。毎号インタビューやコラム中心でたまに小松左京に関係ある作家の短編が載る。この号では冒頭が新井壱江インタビューで講談社の話だが、実はこの新井氏は新井素子のおかあさんであった。それから第5回小松左京賞受賞者の有村とおるインタビューと短編「クリスタルボール」。クリスタルボールは殺人者の遺伝子と脳ニューロンにからめた話でなかなか面白かった。長編になるかもとのことである。次は漫画史研究家の宮本大人との対談と2004年の日本SF大会Gコンの巽孝之との対談のレポート。田中光二のコラムはSF映画についてで、小松が高橋和巳について語るインタビューの1回目と会員の山浦氏による中国恐竜発掘ツアーのレポートがあった。

(「小松左京マガジン17号」イオ発行、角川春樹事務所発売、2005年1月発行、ISBN4-7584-1047-X)

SFマガジン2005年3月号

| コメント(0)

2004年度英米SF受賞作特集号。冒頭を飾るのはヒューゴー/ローカス賞のノヴェラ部門受賞作、ヴァーナー・ヴィンジ「クッキーモンスター」。カスタマーサポート係のメイに来た奇妙なメールの正体を探るうちに明らかになってくる事態の裏側は、という話。名前のクッキーってそっちの意味だったのね。でも面白さはさすがである。他にはネビュラ賞ノヴェレット部門受賞作、ジェフリー・フォード「アイスクリームの帝国」。共感覚を持つ主人公の「ぼく」がコーヒーアイスクリームを食べたとき目にする少女の正体は、という話。最後のせつない終わり方が余韻を生む。もうひとつはヒューゴー賞ノヴェレット部門受賞作、マイクル・スワンウィック「時の軍勢」。物置のドアをただ見張るだけの仕事を言いつけられたエリーが雇い主のターブレッコの正体をあばこうと行動を開始した先に明らかになる事実とは、という話。ラストでエリー自身の正体がはっきりしてすっきりした気分で読み終わった。他には昨年の世界SF大会ノリスコン(Noreascon)4のレポートと田中啓文の連載に山田正紀の新連載「イリュミナシオン」。後者は先行きが楽しみになるプロローグといったところ。

2010年3月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

このアーカイブについて

このページには、2005年2月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2005年1月です。

次のアーカイブは2005年3月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。