サライの13巻。環境破壊により文明社会が崩壊し、人類の多くが16才前後で「変身」してしまう近未来の社会を舞台に、依頼人を守る護衛メイドの1人サライが人類を救うための手がかりを求める。この巻では、屍肉を食らい人間そっくりに擬態する新種の生物「天使」をめぐって、天使の擬態の秘密が人類を救う鍵になるかもしれないと追求するサライたちと、天使に愛妻を殺されたと誤解するゴルジたちが天使の巣をめぐって壮絶な戦いを繰り広げる。途中、生殖能力を得た天使から生まれた真性天使族が天使たちのリーダーとして現れ、自分たちと同じ高度な知能と羽を持つサライを仲間にしようと誘いかけたりするが、人類など滅びてもいいと豪語する彼らに対立するサライは天使たちを守り、最後にはゴルジの誤解も解けて、天使の幼生たちを無事連れ帰ることに成功する。
(「サライ、13」柴田昌弘著、少年画報社YKコミックス、2005年1月発行、ISBN4-7859-2504-3)
2005年1月アーカイブ
ペリーローダンの307巻。この巻は前半の「ネーサン暴走」では、ネーサンの生体ポジトロン部分がPAD病の影響を受け狂った命令を出しだはじめた点と、M13の新アルコン人の惑星トゥラスネオでPAD病に対抗する手段が見つかったとの報の確認に行ったアトラン一行の探索行を描く。最後にはアトランは苦い決断を強いられ、PADの有効な解決策は入手できずに終わる。後半の「マークス惑星応答なし」では銀河中枢部にあるマークスの外交惑星の連絡途絶の調査に行ったティフラー一行がPAD病に罹っていることを自覚しないままにアンドロメダに帰還しようとするマークスに対して、何とかPADのアンドロメダへの伝染を防ごうとする姿を描く。この巻ではアンドロメダへの中間駅を目指すマークス艦へティフラー一行が潜入したところで終わる。
(「マークス惑星応答なし」クルト・マール&ウィリアム・フォルツ著、天沼春樹訳、ハヤカワ文庫SF
超人ロックの新刊。このエピソードはロックシリーズで最も早い時代が舞台である。従来最も初期を扱っていたのは「インフィニット計画」で、これがアルファケンタウリへ向かう恒星船の発進を阻止しようとする陰謀をロックが防ぐ話だったが、超能力者をスキャナーと呼ぶところなどは、今回の作品と同じである。しかし、今作はさらに時代を遡って、まだ人類が宇宙へ出ようとしている時代、最初の軌道エレベータが作られ試験をしている時代である。軌道エレベータを建造中のスカイリフト社で、建造を妨害しようとするグループの策謀を阻止するのがロックの役目である。C国から工作員として派遣された気の達人、王志明(西側流ではスキャナー)がスキャナーとしてのロックに興味を持つのに対し、ロシアのスキャナー、クリチコフは本土へ派遣されるロックを監視しようとしている。さらにC国情報部のボスに就任した湖が送り込んだ刺客の楊が不気味な活動を見せる、というのが2巻の終わりまで。
(「超人ロック、冬の虹、2」聖悠紀著、少年画報社・YKコミックス、2005年1 月発行、ISBN4-7859-2501-9)
超人ロックの新刊。超人ロックは全体で1つの未来史を形成していて、その中で様々なエピソードが語られていく。全体を貫くのが不死の超能力者、超人ロックということである。長い年月の間には超能力者が虐げられている時代や、社会に受け入れられて比較的幸せな時代などいろいろだが、このエピソードの時代は超能力者(Eと呼ばれる)がごく普通の一般人に混じっている。特殊な「ゲート」を作ることのできるEであるジュナがロックたちに敵対するグループに捕らえられ、ロックとヤマトが救出に向かう。敵対勢力側では、超能力を感知してマイクロブラックホールを打ち込む対E用の武器ラムタラの開発者フレア・マイダスが執拗にロックに復讐を果たそうとする。このエピソードはこの巻で決着がつき、掲載誌である「超人ロックSpecial」ではコミカルな設定のハント&ロックのエピソードが連載中だそうなので、そちらも楽しみである。
(「超人ロック、久遠の瞳」聖悠紀著、ビブロスMeguCOMICS、2005年1月発行、ISBN4-8352-1701-2)
上野の森の西郷さんの銅像が突然動き出した。サイゴーさんとして活動しだした(元)銅像は純朴でとぼけたキャラクターで周囲の人たちから愛されるようになるが、地上げビルのオーナーと、追い出された人たちとの確執が、古代銅という特殊な性質を持つ物質の謎とからめて一大騒動に発展し、サイゴーさんもそれに巻き込まれていく。ふくやまけいこの作品はほんとの悪者が出てこないが、この作品でも、いかにもの悪役(名前からして亜倉津)が、悪役らしからぬほのぼのする姿をちらっと見せたりして持ち味を発揮している。描き下ろしの「幸せのサイゴーさん」までついてとっても満足できる作品。
(「サイゴーさんの幸せ」ふくやまけいこ著、ハヤカワコミック文庫、2005年1月発行、ISBN4-15-030779-2)
コニー・ウィリスの大作の文庫化。単行本の時も厚いと思ったが、文庫化しても上下で1200ページを超える分量がある。ウィリスのすごいのは、これだけ厚いにもかかわらず、すんなりと読めてしまうところだろう。「ドゥームズデイブック」の時も厚さのわりにすんなり読めたが、それ以上である。認知心理学者のジョアンナは神経内科医のリチャードと協力しNDE(Near Death Experience=臨死体験)の解明を目指すプロジェクトを進めている。NDEの科学的な解決を目指すジョアンナたちに対し、<向こう側>を描くベストセラー作家のマンドレイクたちとのやりとりが、おきまりのコミカルなシチュエーションとして繰り返され、舞台となる総合病院の増築を重ねた迷路のような構造も繰り返し描写される。こうしたお決まりの構造が安心して読み進める一因だろうが、第2部の終わりになってNDE解明のヒントを得て舞い上がったジョアンナは麻薬中毒の少年に刺されてしまう。主人公がこれでは、どうやって第3部を進めるんだろう、と思ったが、残るリチャードたちがNDEの秘密の迫る様は、NDEに陥った患者が生還に向けてもがく様をなぞるようであり、クライマックスで心臓病患者の少女メイジーがNDEから帰還するところはまさに手に汗握るところでウィリスのうまさが生きている。早く「犬は勘定に入れません」も文庫化してくれないかなあ。
(「航路」コニー・ウィリス著、ヴィレッジブックス(ソニーマガジンズ)、2004年12月発行、ISBN4-7897-2439-5)
東京物語の最終巻。平介と草二郎の物語も西王子家での話で決着がつくが、草二郎が大陸へわたった結末は、フミちゃんとのことがあいまいなままなので、できれば続きを描いて欲しいものである。番外編として収録してある「桜」もいい話。外国から帰国した少女、桜とその祖父、菊也、それに菊也と2人で小説を書いていたが桜を迎えに行った空港で突然倒れ、死亡(?)した朔朗。2人の編集者として登場する平介が桜と遭遇する事件で明らかになることは、という話。あとがきにもあるように実は東京オリンピックがなかったパラレルワールド話にもなっているが、基本は東京物語と同じく昭和のほのぼのとした人や情景がいきている。このあともハヤカワコミック文庫からはふくやまけいこ作品の刊行が続くようなので楽しみである。
(「東京物語3」ふくやまけいこ著、ハヤカワコミック文庫、2005年1月刊行、ISBN4-15-030778-4)
さっそく続きを読んでみた。今回は体験入学生として月の迦具夜学院を訪れた樋貫凛が、第2代の月巫姫フレーネ・セレスティーニの残した迦具夜勅命権をめぐっての事件に巻き込まれる。月人と地球人の対立や偏見にされされ、また第1巻で出てきたOELF(地球解放戦線)や、逆に過激な月人優位主義者であるTHAOAL(月人神聖同盟)などのテロ組織も絡んできて絶対絶命のピンチが続く中、信念を貫き通す凛の姿がストレートに描かれていく。クライマックスに向かっての盛り上がりは今作の方が良かったように感じた。松竜氏のイラストも相変わらず似合っている。できれば続巻では、現月巫女姫のヒミツに関して何らかの進展があって欲しいものである。
(「月巫女のエンゲージナイト」咲田哲宏著、角川スニーカー文庫、2004年10月発行、ISBN4-04-424504-5)
地球を2分した奈落大戦の後、平和維持のための調停者として月巫姫という制度が作られた。月巫姫は5年の任期の間、5回以内の限定で絶対的な命令権「迦具夜勅命権」を行使することができ、それは月ー地球のすべての地域に及ぶ。大戦の60年後、現月巫姫フェイ・クインは16歳の若さで民族紛争をあざやかな手腕で解決したが、テログループ地球開放戦線の襲撃を受ける。そして1年後、月巫姫の姫護衛士団を目指す高校生、樋貫凛は月巫姫をめぐる事件に巻き込まれる。独特な用語とルビの使い方、例えば、月巫姫(カグヤヒメ)、姫護衛士団(カグヤサテライト)、迦具夜勅命権(ホーリーコマンド)、月駆騎兵(セレネー)などなどに抵抗がなくなれば、後はストレートなヤングアダルト的ストーリーである。松竜氏のイラストは雰囲気に合っていてとっても良い。結末は一応の区切りがついたってところで、続編も既に出ている。
(「月巫女のアフタースクール」咲田哲宏著、角川スニーカー文庫、2004年5月発行、ISBN4-04-424503-7)
東本昌平描くバイクマンガ(?)の第3巻。近未来の地球は中国を中心とする官僚の管理社会となっている。そこに地球外のコロニー、ヤマタイから受験のために東京の予備校にきたジュンは、ご法度のはずのバイク、しかも電動ではなく内燃機関のバイクを駆る異端者たちに遭遇する。というあたりが背景である。知り合った女の子モラやその仲間のノブはリストアしたCB92を駆るが、別グループのヒデはリストアしたW2を駆る。リストアとはいえフロントサスまでスイングアームにしてあったりするのでかつての名機をそのままリストアしたものではないようだ。125CC2気筒のCB92では650CCのW2にはかなわない。そんなときリストア品発掘現場でノブが見つけたのはウイングマークのついた4気筒のエンジンであった。という2巻までの流れを受け、3巻では最下層出身者のイーサムのところを訪れたジュンが帰途おみやげの野菜を踏みにじられたことから逆上、逮捕され現実の世界のしくみに疑問を持っていくあたりで終了。はやく4気筒CBの復活を見たいものである。
(「CB感/003」東本昌平著、小学館ビッグコミックス、2004年12月発行、ISBN4-09-187333-2)
ダン・シモンズのアクション小説、特にSFというわけではない。出たのは3年ほど前だが、今回文庫化されたので読んでみた。事故復元調査員のダーウィン・マイナーが大規模な保険詐欺グループの陰謀に巻き込まれて奮闘する。ダーウィンが理学博士号(物理学)を持っていることや、ベトナム戦争当時、海兵隊の狙撃兵としての経験を秘めていることが後半で生きてくるが、それよりも各種の車(日本車も多く含まれるがダーウィンの愛車の黒のアキュラNSXはかっこいい)に関する細かな薀蓄や、後半の銃器に関する薀蓄が楽しかった。文庫で600ページを超える分量だがシモンズの諸作に習って読みやすく、あっというまに読んでしまった。続編も掛けそうな設定だがまだ書かれてはいないらしい。ジョー・クルツもののシリーズも文庫かしてくれないかなあ。SFの新作の Ilium もハヤカワで刊行予定とのことなので楽しみである。
(「ダーウィンの剃刀」ダン・シモンズ著、嶋田洋一・渡辺庸子訳、ハヤカワ文庫NV、2004年12月発行、ISBN4-15-041073-9)
谷甲州の特集号。基本的に谷甲州って工学系のハードSF書きと思ってるので好みに合うはずで、実際初期の奇想天外に載ってた作品なんかは読んでるんだけど、最近の作品はあまり読んでなかったりする。機会があればまとめ読みしよう。この号に載ってる「葛城天狗」のは山岳伝奇連作の第1話だそうだが、やっぱり航空宇宙軍ものを書いて欲しいものである。他には小林泰三の「天体の回転について」は科学を拒否する人々の中の異端児である主人公が遺跡?とも思われる軌道エレベータで遍歴する話。面白いんだけど、そこでやめるなってとこで終わってるのが残念。山本弘の「シュレーディンガーのチョコパフェ」は量子力学的な世界解釈の問題に因果率に影響を及ぼす先進波発生機が及ぼす影響を扱った作品。とはいえ語り口はヤングアダルト的で、主人公のカップルやアキバ系の細かい描写がいい。
