カジシンこと梶尾真治の連作集。夏には出てたんだけど積読状態だったのをちょっと空き時間ができたので読んでみた。「美亜へ贈る真珠」に始まる女性名がタイトルに入った一連のリリカルなSFの系譜。星間交通のジャンクションで出会って一目惚れした異星女性には過酷な運命が待っていたという表題作。探査船が着陸した星には遺跡と見られる塔とうたたねをする猿人がいたが、メンバーが共通に見る夢には美しい女性が出てきて、、、という「ドリーム・スターの亜眠」。重力異常空間の迂回路を建設しようとした星には幽霊が出るといわれるが、その正体は、、、という「ホーンテッド・スターの玲乃」。恋人の父親の権力者に課せられた課題の星へ赴いた2人だが、その星には重大な問題が隠されていたという「キュービック・スターの麻綾」、の4本。いずれも恋人の2人の間に何らかの問題がおきるが、最後には2人の幸せな将来を思わせる結末になっていて安心して読める作品。
(「スカーレット・スターの耀奈」梶尾真治著、新潮文庫、2004年8月発行、ISBN4-10-149008-2)
2004年12月アーカイブ
ペリーローダン306巻。前半の「焦点メドセンター」では、PAD病がハイパーカムを通じて感染することが判明し、事態はさらに悪化の一途をたどる。後半の「銀河の深淵」では、ハルト人にまでPAD病が感染することが判明、人類の友と信じられていたイホ・トロトまでが感染し、病状の悪化と共に5万年前のレムール人との戦争時の記憶に取り付かれ、レムール系人類への憎悪をつのらせアトランにまで襲い掛かる。また他のハルト人たちも植民地人類を強制的に押さえつけようとし、各地でパニックが起こる。さらにはアコン人も5万年前の記憶により、ハルト人を宿敵とみなすようになり、ローダンに対して対ハルト戦争での共闘を持ちかける。このままでは銀河全体で知性体が滅びるとのネーサンの予測に対しローダンに打つ手はあるのか?
(「焦点メドセンター」ハンス・クナイフェル&H.G.フランシス著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF<SF1494>、2004年12月発行、ISBN4-15-011494-3)
スタートレック・エンタープライズの新刊。残念ながらエンタープライズは見てないのでこれがノヴェライズ(つまりTV版エピソードに基づいている)に当たるのかどうか知らない。ストーリーは2つの種族の争いに巻き込まれたエンタープライズと、それに関連して死亡した部下のハート少尉の死因にまつわる謎を解明しようと苦悩するエンタープライズの戦術士のリード大尉を中心に進んでいく。現在の視点とハート死亡前の時点の視点をカットバックで交互に描き、最後に収束するという構成だが、読後感はなつかしのTOSの1エピソードを読んだような感じであった。前にも書いたかもしれないが、ノヴェライズが完備していたTOSに比べて他のシリーズはTVのエピソードのノヴェライズが欠けているものが多々あるようである。どうにかならないのかなあ?
(「名誉の代償」デイブ・スターン著、斉藤伯好訳、ハヤカワ文庫SF、2004年12月発行、ISBN4-15-011495-1)
あの柳田理科雄がゴジラ FINAL WARS を記念しての企画本のようだ。ゴジラ映画はリアルタイムで見たのは「怪獣大戦争」あたりからで第1期の作品は大学時代に名画座の特集でほとんど見たはずである。(福岡に来てからもテアトル西新で見た気がする。池袋の名画座もテアトル西新も今はない。)しかし90年代のゴジラシリーズはほとんど見てない。2001年の「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃」からは子供を連れて見るようになったくらいである。本の内容はいつもの空想科学読本シリーズのものなんだが、柳田氏は1961年生まれとのことなのでちょっと下の世代になるようだが、まあほぼ同世代ということで、思い入れのある映画がそれほど違ってないようだ。
(「ゴジラVS柳田理科雄」柳田理科雄著、メディアファクトリー、2004年12月発行、ISBN4-8401-1181-2)
JAからハヤカワコミック文庫になって出たふくやまけいこの作品。不覚jながら今までよんだことがなかったが、いいねえ、やっぱり。1巻の解説で新井素子も書いてるけど「かわいい」絵柄で「ほのぼの」という作風が昭和初期を舞台にしたこの作品でもよく生きている。出版社の新米、桧前平介が出会った青年、牧野草二郎と巻き起こる怪事件に立ち向かう、というのが基本だが、草二郎には秘められた過去があって、これがちょっとSFっぽい趣向になっている。ちょうどいいところで2巻が終了しているので早く1月刊行予定の3巻を読みたい。ちゃんと完結してるんだろうな?
(「東京物語1,2」ふくやまけいこ著、ハヤカワコミック文庫、2004年12月発行、ISBN4-15-030775-X、4-15-030776-8)
1年ほど前に出てたものだが、前作「天空の劫罰」が期待はずれだったのでなかなか読み始めることができなかった。マンハッタン計画にも参画した物理学者ペトロシアンの残した日記の中の、世界を滅ぼす可能性を秘めた方程式をめぐって、主人公の気象学者が様々なグループからつけねらわれる中、真相を追い求める。前作よりは冒険活劇風になり、肩透かしもそれほどではないが、随所にストーリーのかみ合わないところが見られ、まだまだこなれる余地はあるようだ。著者のネイピアは天文学者とのことなのでちょっと調べると現在は北アイルランドの Armagh 天文台にいるようだ。(http://star.arm.ac.uk/staff/billn.html)経歴を見るとエディンバラの王立天文台に長くいたようなので、今作に出てくるエディンバラの描写は地元だったわけである。論文は彗星関係のものがいくつか見つかったので前作は専門分野から入ったということか。次作を読むかどうかはもっと小説がうまくなっていてくれるかどうか次第かな。
(「ペトロシアンの方程式」ビル・ネイピア著、藤田佳澄訳、新潮文庫、2004年1月発行、ISBN4-10-221823-8)
追悼:矢野徹、と特集はアメリカ現代社会とSF。矢野徹の追悼で載っている再録作品は「さまよえる騎士団の伝説」1974年2月号に載ったもの。SFマガジンを最初に買い始めたのは高校に入ってのはずなので、まさに買い始めて最初の特大号(以前は2月号は年末に出るのでちょっと分厚い特大号が多かった)に載ったもの。よく覚えている作品でもある。追悼文を載せているのが10人もいるのは矢野氏の人徳か。大腸ガンだったそうだが、デューンのキリがつくまで訳し終えていたのはさすがである。特集の方はアメリカ現代社会を反映したSFというだけで見当がつくが、実際ダグラス・レインとM.リッカートの作品は、そういった作風のものばかりで私の趣味からすると、ちょっとなあ、というところ。結局一番面白かったのは前号から前後編で訳載されたG.R.R.マーティンの「禍つ星」であった。他に浅倉久志セレクションのD.ナイトと草上仁の読みきり。
近未来の宇宙開発をリアルに描いたMOONLIGHTMILEの9巻。同じような時期にやはり近未来の宇宙を扱って話題になったプラネテスが4巻で一時中断しているのに対して順調に巻を重ねている。時節がらか、宇宙開発とはいえ国家、特に軍関係の確執やテロのかかわりなどがストーリーに重くのしかかっている。この巻では月基地「スイートホーム」に紛れ込んでいたテロリスト「カトー」の件に決着がつくが、そのおかげで悟郎とロストマンの間には決定的な亀裂がはいってしまう。現在連載でストーリーが続いているが池田女史(悟郎の恋人)も日本も非常に苦しい立場に追い込まれているようだ。いったいすっきりとした結末がつくんだろうか?
(「MOONLIGHTMILE/9」太田垣康男著、小学館ビッグコミックス、2004年11月発行、ISBN4-0918-6259-4)
サイコダイバーシリーズの新刊(シリーズ21とある)。シリーズでおなじみの超A級サイコダイバーである、九門鳳介・毒島獣太に、高野山の美空、文成仙吉、猿翁、黒御所といった面々が顔を揃えて、空海の四殺と鬼道や黄金の謎をめぐって確執する。あとがきによればあと3冊で決着をつけるとのことでやっとクライマックスが近づいてきている感じかな。このシリーズも新刊が待ち遠しいが、SFJapanで連載中の九十九乱造の方なんか、掲載誌そのものが年2回ほどしか出ないので話が進まないことおびただしい。もうちょっとなんとかならないものか。
(「新・魔獣狩り9・狂龍編」夢枕獏著、祥伝社NONNOVEL、2004年11月発行、ISBN4-396-20789-1)
