このページの内容は、氏間の考えている仮説です。みなさんのご意見をうかがいながらアップデートしたいと考えています。
ICFについて耳慣れない方は、ICF(WHO)、またはICF(厚生労働省)をご覧いただくと、このページの内容が分かりやすいと思われます。
弱視の状態で外界の情報を視覚により獲得しようとすると、十分に知覚できる程度に網膜像を拡大する必要があります。その方法には大きく4つの手段があるといわれています。
この方法は、拡大コピーとか拡大印刷など、読みものそのものを拡大することによって、網膜像を拡大する方法です。拡大教科書もこれに属します。とても手軽であり、利用する側も負担が少なく利用し始めることが可能です。しかし、拡大コピーなどをする必要があり、全面的に環境因子に頼った方法という捉え方もできるでしょう。社会にあふれる情報全てがこのような状態で提供されていませんから、この方法のみに頼った拡大法を続けることと参加を促すことは対立する関係になる場合も考えられます。
相対サイズ拡大法を簡便に実現するためのツールHTML viewerのページです。このツールは、拡大教科書を手軽に作り出すための一つのモデルを提供すると考えています。
この方法は、眼を読み物に接近させて網膜像を拡大する方法です。当然、近点を超えて接近すると網膜像がぼやけますから、拡大鏡を利用することになります。拡大鏡を利用するので世の中にある読み物の多くのものを読むことができます。自力で世にあふれる多くの読み物にアクセスできます。個人因子の活動性を高めることにより参加を促す方法と捉えることもできるでしょう。しかし、拡大鏡を用いて読書したり書字したりするためにはある程度のトレーニングが必要です。つまり、個人因子を高めるための過程が必要になります。また、この方法は10倍程度までが適応という考え方もあり、それ以上の拡大を必要とするケースでは適応しにくいことが考えられます。拡大鏡が用いられます。

この方法は、2枚のレンズを用いて、視角を拡大して網膜像を拡大する方法です。近くのものだと顕微鏡、遠くのものだと望遠鏡のような原理になります。この方法も道具を用いることで世の中にある読み物の多くのものを読むことができます。個人因子を高めて参加の拡大を図る方法と考えられます。しかし、相対距離拡大法と同じような点が課題となります。単眼鏡が用いられます。
この方法は、カメラでとらえた画像をテレビに大きく映し出し、それを見ることで網膜像を拡大する方法です。数十倍といった倍率を得ることができる他、配色を変更したり、リーディングスリットのように不必要な部分にマスクをかけるなど電子的に様々な読書環境を作り出すことが可能です。個人因子を高めて参加の拡大を図る方法と考えられます。しかし、相対距離拡大法と同じような点が課題となります。また、電気を用いるため、起動に時間がかかったり、電源の制約を受けたり、ピントが合うのに時間がかかったりなどの点が課題になることが考えられます。拡大読書器が用いられます。

上記のように、相対サイズ拡大法は、多くの部分を環境因子に依存しています。その他の拡大法は個人因子に依存しています。つまり、相対サイズ拡大法は短期的にみると利用者フレンドリーな方法と考えられます。つまり、利用者の技術の向上や発達の未熟な状態であっても網膜の拡大が望めます。よって、学習の初期段階(小学校低学年から中学年にかけて)で、学習の方法を学んだり、基本的な文字を学んだり、するような段階では特に有効と考えられます。それに対して、他の3つの拡大法は長期的にみて利用者フレンドリーと考えられます。つまり、環境因子の改善にできるだけ頼らないで、トレーニングにより個人因子を鍛え、高め、活動性や参加を促すことが望めるからです。つまり、人間が拡大鏡や単眼鏡や拡大読書器などを利用する技術を身につけることで、世の中の多くの読み物にアクセスできるようになることが望めます。
弱視の子どもたちのに将来どのような大人になってほしいか。まず、それを関係する大人(保護者、学校の教師、医療関係者、教育委員会、研究者等)が考えて、共有しておくことが重要だと思われます。この子どもの状況からして、「将来は拡大鏡を使いこなして資料を読みこなし、大学を卒業して、就職してほしい。」、「小学生の間は、プライベートサービスとで32ptの拡大教科書を依頼するけれども、小学校高学年からは拡大読書器のトレーニングを始めて、中学生になったら、標準規格の拡大教科書を使い、高校生になったら、通常の教科書を読みこなせるようにしたい。」、「小学校の間は標準規格の拡大教科書を利用するけれども、小2から拡大鏡のトレーニング、小3からは単眼鏡のトレーニングをはじめて、小学5年になったら、平常時は通常の教科書を利用して、必要なときにだけ拡大教科書を利用する。中学生になると教科書の文字も細かくなるかもしれないので、中学1年の間は様子をみるために拡大教科書と通常の教科書を利用するけれども、通常の教科書だけで大丈夫そうであれば中2からは通常の教科書のみにしよう。」などなど、子どもたちの先を見据えた指導方針を立てることが重要と考えられます。
拡大教科書を発注される場合、このような長期的な拡大法のトータルコーディネートに基づいて教科書を選択するべきだと私は考えています。もちろん、社会が成熟して、全ての本の文字が選べるような時代が来ることを目指す取り組みは重要と思います。同時に、今の時代(環境因子)の中で活動性を上げ、参加できるように個人因子を高めていくことは、さらに重要であり、それを中心的に担うのは教育だと考えられます。ぜひ、子どもたちの自立を多くの関係者が見据え、今のアクションに反映していただきたいと考えています。無計画な拡大教科書の利用は危険である可能性を意識したいと考えます。
氏間研究室ではこれらに関するお手伝いを積極的に行っています。お気軽にご相談ください。

この話は、先天的な弱視の方で、見え方に大きな変化がないことが前提です。つまり、中途で弱視の状態になったとか、弱視ではあったが途中でさらに視力が低下したなどの場合は、例えば高校生であっても、成人であっても、拡大鏡等の技術を身につけるまでは相対サイズ拡大法を優先することはいうまでもありません。