7-3. 子房の位置と果実
7-3-1. 上位子房と下位子房

ウリ科の花やキキョウ科の花では、子房は花被の付け根よりも下にある。子房はまわりの組織に埋め込まれていて、花を上からのぞき込むと、まるで花の底からいきなり花柱が突き出しているように見える。このような子房を下位子房[inferior ovary]という。

ホタルブクロ下位子房を持つホタルブクロ(キキョウ科)の花基部の縦断面

一方、花被の付け根よりも上についている子房を上位子房[superior ovary]という。

ナス上位子房を持つナス(ナス科)の花と縦断面
ナス

サクラでは、子房は「つぼ」のようなものの中にあって、つぼのへりに花被片や雄しべがつく。子房は花被の付け根よりも下にあるが、まわりの組織から独立している。花被の付け根を基準に考えると下位子房になるし、子房が独立しているか埋め込まれているかで考えると上位子房になる。このような形態を「花被片や雄しべが子房に対して周位にある」と表現する。このような花はバラ科に例が多い。

サクラの花
サクラ(セイヨウミザクラ)(バラ科)の花の中心部の断面。

上位子房を持つ花を「子房上位の花」[hypogynous flower]、下位子房を持つ花を「子房下位の花」[epigynous flower]、サクラ・ノイバラ・ハマナスのような子房を持つ花を「子房周位の花」[perigynous flower]と呼ぶ。

上位子房と下位子房の中間的なかたち――子房の中間部に花被や雄しべがついている――を持つものもあり、「中位子房/子房中位の花」または「半下位子房[half-onferior ovary]/子房半下位の花」と呼ばれる。

「子房上位/下位」は「子房が上位/下位にある」を略したもの、「子房周位」は「花被片や雄しべが子房に対して周位にある」を略したもの(「子房が周位にある」ではない)で、なぜか略し方に一貫性がない。
子房 上位子房 (名称なし) 下位子房
子房上位の花 子房周位の花 子房下位の花
子房の上下 花被片の付け根より上 花被片の付け根より下
子房と萼筒 分離 合着
花の模式図 上位子房 子房に周生 下位子房
果実の模式図 上位子房
1―子房
2―萼
3―花柱痕
子房に周生
子房を包むつぼが
成長しない場合
子房に周生
子房を包むつぼが
成長する場合
下位子房
7-3-2. 子房の位置と果実の形態

上位子房がふくらんでできた果実(ナス科の野菜・イチゴ類・キイチゴ類・カキ・ミカンなど)は、果実の基部(枝についていた方)に萼が残っていることが多い(「へた」と呼ばれる)。下位子房からできた果実(ウリ科の野菜・リンゴなど)では、萼は果実の先端の方に残っていることが多い。

カキノキ雌
カキノキ(カキノキ科)の枝。葉腋に雌花が1つずつつく。雌花は上位子房と大きな萼を持っている。

カキノキ果実カキノキの果実

ビワビワ
ビワビワ(バラ科)の花は下位子房。

ビワビワの実。先端に萼片(子房が大きくなったため、内側を向いてしまっている)が残っている。

ビワビワ
縦切りにすると、実の先端に空洞があり、その中に雄しべや柱頭も残っている。

リンゴリンゴリンゴ
リンゴ(バラ科)。果実の先端に萼片や雄しべがついている。

リンゴリンゴ
リンゴの断面。先端部のくぼみに、萼片や雄しべ、花柱が残る。

子房周位の花からできる果実は、子房がおさまっている「つぼ」が取れる場合と残る場合でようすが違う。「つぼ」が取れる場合(サクラ・ウメ・モモなど)は、先端に柱頭や柱頭の痕しか残らない点では上位子房からできた果実に似ているが、「へた」はない点では下位子房からできた果実に似ている。

「つぼ」が残る場合、果実の生長とともにつぼが成長すれば(バラの仲間・ロウバイなど)、外から見ると下位子房由来の果実によく似ているが、断面を見ると子房がまわりの壁から独立している。また、果実だけが生長してつぼから抜きでると(ユキヤナギなど)、上位子房からできた果実と区別が付かない。

テリハノイバラテリハノイバラ(バラ科)の花。つぼの中に多数の雌しべが入っている。
テリハノイバラテリハノイバラ(バラ科)の果実。成長したつぼは朱色の果肉となる。つぼの中には雌しべがそのまま大きくなったような果実がある。
テリハノイバラ

ロウバイ
ロウバイ(ロウバイ科)の花(雄性期)の中心部の断面。雄しべの内側がとっくりのようになっていて、とっくりの口には10本ほどの突起がある。とっくりの中には数個の雌しべがあり、花柱がとっくりの口から外に伸びている。

ロウバイロウバイ
ロウバイ4月末の写真。花が終わると、とっくりは成長して長さ数センチほどの殻になる。突起が太くなってとっくりの口は閉ざされる。殻のまわりには花被片の痕、また口の近くには雄しべの痕がある。花柱は萎れて黒い筋になり、子房が成長して果実になる。

ロウバイ
次の年、花が咲くころには、乾いたとっくり形の殻の中に、がま口型の果実が数個入っている。殻の口を閉じていた突起は細くなり、口にすきまができる。

ユキヤナギ
ユキヤナギユキヤナギ(バラ科)の花。小さい花だが、花の中心を拡大すると、オレンジ色の縁のあるつぼの中に5つの雌しべが入り、つぼの口から柱頭だけが突き出している。

ユキヤナギユキヤナギユキヤナギ
ユキヤナギの果実。5つの雌しべは、それぞれが1心皮でできている。花が終わると雌しべが成長して果実となり、やがて裂けて種子を出す。


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