問題の所在と本報告書の概要
現在、福岡教育大学が「障害者への支援がある大学」として存在することが求められている。障害のある学生は、学ぶ意志がありながら様々な制約を受けてきている。さらにいえば、「顕在化されていない志願者」としての障害者の存在にも注目すべきである。入試をふくめた入学前からも、大学の人的環境・物的環境などの様々な制約のために受験を断念せざるを得ない「障害者の存在」に注目すべきである。もちろん、社会全体として大学としても、これまでも様々な取り組みを行ってきているが、充分なものにはほど遠いというのが現実である。障害のある学生の「教育を受ける権利の再確認」を行うと同時に、入試をふくめた入学前からの取り組みおよび入学後の取り組みの改善を図ることが必要である。
ここで、障害者の社会参加の推進という観点から最近の動向を簡単にまとめてみる。ノーマライゼーションの潮流のもとで、「障害者の完全な社会参加」へ向けての取り組みが行われている。具体的な一例として、「欠格条項の撤廃」があげられる。2001年7月には、視覚や聴覚の障害者に医師、看護士、薬剤師などの国家資格・免許を認めることができるように、従来の欠格条項が撤廃された。教員養成大学としての福岡教育大学に直接関係するものとしては、障害と教員採用に関する事柄がある。1979年には民法が改正されて、「準禁治産者の定義から聾者、唖者、盲者の文言が削除」された。このことによって、盲者および聾者も教員になれる道が開かれた。以後、全国的に盲者および聾者が公立・私立の教員として採用される事例が少しづつではあるが見られるようになってきた。平成14年度には、秋田県、岐阜県などが公立学校教員採用候補者選考試験において障害者を対象とした採用定数枠を設定して特別選考を行っている。
このような時代の潮流の中で、教員養成大学としての福岡教育大学における「障害のある学生への支援」の在り方を問い直してみることは、大きな意義がある。本報告書では、福岡教育大学における障害のある学生への支援について、これまでの経過、現状およびこれからの支援の方向性を中心にまとめた。なお、世界と日本における障害者施策の動向および他大学の取り組みについても簡単ではあるが資料をまとめた。これらの資料に基づいて、本学における取り組みを広い視野で見つめ直すことが可能である。また、そのような広い視野に基づいた取り組みが必要であると考えている。なお、蛇足とは思うが、本報告書をまとめるにあたっては、「障害者の完全な社会参加へ向けての取り組み」をキーワードとして取り組んだことを述べておく。