は じ め に

 本報告書は「平成13年度福岡教育大学FD研究報告書」の中から、「U.分科会研究報告、1.障害児教育・通常教育関連分科会研究報告」について別冊としてまとめたものである。本報告書別冊の作成に至った経過、意義及び内容について簡単に紹介する。

 近年、大学においてFDに関する議論と取り組みが大きな課題となっている。福岡教育大学においても、教職員の資質向上をはかるべく平成13年4月に第1回福岡教育大学FD研究会が開催された。これが全学的な組織としての取り組みの第1歩といえる。もちろん、それまでも教職員個々の取り組み、有志グループの取り組み等が地道に行われていたが、全学的・組織的・体系的な取り組みには至っていなかった。その意味で、第1回福岡教育大学FD研究会が開催されて、その場で「全学的なFDの推進に寄与する方向性が了承された」ことは福岡教育大学におけるFD推進にとって大きな意義があったといえる。また、FD研究会はFDに関する様々な課題に取り組むために、6つの分科会を設置して、連携をとりながらそれぞれの課題に取り組んできた。分科会名について紹介すると、「教養教育分科会」、「教育実習関連分科会」、「教職基礎・教科教育連携分科会」、「教科専門・教科教育連携分科会」、「授業評価活用分科会」および「障害児教育・通常教育関連分科会」である。各分科会はそれぞれ会合を重ねて、平成13年度の研究テーマの決定とそれに基づく研究を行ってきた。

 障害児教育・通常教育関連分科会では、平成13年度の研究テーマを「障害のある学生への支援−福岡教育大学の取り組み−」に決定して、研究に取り組んできた。分科会としての公式的会合の開催は2回であったが、研究メンバーは非公式ながら日常的に連絡を取り合って精力的に研究を推進してきた。その結果、平成14年3月8日開催の「福岡教育大学FD研修会」において、他の分科会と共に研究テーマに関する発表を行うことができた。さらに、発表の内容をこのような研究報告書として公表できるに至った。研究を行うにあたっては、福岡教育大学が過去に対応してきた障害のある学生への支援に関する事務記録の検索、過去の対応に関する当時の関係者へのインタビュー等々で、事務局、学生センター、保健管理センター、障害児治療教育センターおよび関係各講座には多大なご協力をいただいた。ここに記して謝意を表する次第である。

 さて、本報告書の内容であるが、福岡教育大学における障害のある学生への支援について、これまでの経過、現状およびこれからの支援の方向性を中心にまとめた。なお、世界と日本における障害者施策の動向および他大学の取り組みについても簡単ではあるが資料をまとめた。これらの資料に基づいて、本学における取り組みを広い視野で見つめ直すことが可能である。また、そのような広い視野に基づいた取り組みが必要であると考えている。

 ここで研究テーマである「障害者への支援がある大学」に関連する時代の潮流について、「障害者の完全な社会参加の推進」という観点から簡単にまとめてみる。日本の「障害者の完全な社会参加」へ向けての取り組みの具体的な一例として、「欠格条項の撤廃」があげられる。2001年には医師、看護士、薬剤師などの国家資格・免許に関して視覚障害者や聴覚障害者を排除していた欠格条項が撤廃された。教員養成大学に直接関係する事柄としては、1979年の民法改正において「準禁治産者の定義から聾者、唖者、盲者の文言が削除」され、盲者および聾者も教員になれる道が開かれた。以後、全国的に盲者および聾者が教員として採用される事例が少しずつではあるが増えてきている。平成14年度には、いくつかの自治体で公立学校教員採用候補者選考試験において、障害者を対象とした採用定数枠を設定して特別選考を行っている。このような時代の潮流の中で、教員養成大学としての福岡教育大学における「障害のある学生への支援」の在り方を問い直してみることは、大きな意義がある。

 今回の「障害のある学生への支援−福岡教育大学の取り組み−」の研究が、教員養成大学あるいは広く大学全般における「障害のある学生への支援」、さらには「障害者の完全な社会参加」にいささかでも寄与できることを願っている。しかし、この研究はまだ緒についたばかりである。多くの方のご支援とご批判をお願いしたい。


平成14年3月 
 福岡教育大学 南出好史 

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