V.本学の現在の取り組み
平成13年度の推薦入試で、視覚障害のある学生が生涯スポーツ芸術課程に入学した。その取り組みは本学における初の全学的取り組みといえるものである。以下、順を追って報告する。
平成12年
・ 6月
*本人から12月の推薦入試受験に当たっての事前相談あり。入学試験管理委員長から教務委員長ほかへ、検討依頼。
*教務委員長から回答。受講する授業担当教官に協力を依頼、点字ブロックの敷設、点字翻訳機などの整備、人的支援体制の確立。
・ 9月
*入学試験管理委員会が受験許可決定。
・12月
*推薦入試合格
*出身校(筑波大学附属盲学校)教諭との話し合い
平成13年
・ 1月
*筑波大学附属盲学校からパソコンシステムの資料、「身体に障害を有する学生の補助等について」のマニュアルが提出される(ただちに機器の見積もりに入る)
・ 2月
*部会で入学試験管理委員会が全盲学生の入学を報告
*教務委員会の審議 本学の対応マニュアルを作成する
*授業が初回から受けられるように、担当教官と打ち合わせする
*視覚を前提とした授業では特別の工夫をする旨を確認
*全学的なプロジェクトとして経費を要求する
*市道・県道への点字ブロック設置依頼(宗像市、福岡県土木事務所)
・ 3月
*会計課に備品類の予算要求
*マニュアル(「視覚障害のある学生の履修支援の手引き」教務委員会作成)を全学に配布(資料2、資料3参照)
*筑波大学附属盲学校教諭との話し合い
*教務委員会報告 音楽以外の受講科目を決定 等
*予算委員長に学習補助者(チューター)雇い上げ経費を要求
*本人および歩行訓練士との話し合い
・ 4月
*当該学生への連絡窓口を一本化(教務課長補佐)
*授業担当教官へ受講予定と本人の希望を伝達
*プール横、教育大前駅構内、駅横の信号から西門まで点字ブロックが敷設されていることを確認
*本人から掲示物のコピーが欲しいとの依頼(見落としがないよう)
*チューターの選考は音楽教育講座で進めていることを確認。
・ 5月
*学長裁定で「身体に障害のある学生の支援懇談会」が発足する(資料4参照)。
以下に、支援の内容を項目別にまとめる。
表10 視覚障害のある学生への支援内容
大学の対応 音楽教育講座の対応 入試時の対応 入試に関する配慮を講座に依頼 付き添いの入室を許可
試験時間を延長する設備面 点字ブロック敷設
手すりをつける
部屋の入り口に点字を表示物的支援 点字パソコン
点字プリンタ
点字楽譜
教科書の点訳点字楽譜 人的支援 チューターの予算計上
点訳の予算計上チューターの選考、配置(常時3人) 授業への配慮 受講する授業の担当教官に受講時の配慮を依頼
前期終了後、授業担当教官にアンケートを実施(資料5)教科書・資料の点訳
資料を授業前に渡す
フロッピーディスクに資料を入れて渡す
触覚で覚えてもらう工夫
必要部分を音読する
レポートの提出期限を延ばす寮生活 寮務委員会が対応マニュアルを作成、寮生に配布(資料6) その他 対応窓口を一本化(教務課)
全学に対応マニュアル配布(「視覚障害のある学生の履修支援の手引き」)
「障害のある学生の支援懇談会」の設置教官が点字講習会に参加
視覚障害のある学生の入学が決定したときから、さまざまな支援策を講じた。支援機器のほとんどは大学の予算で措置され、講座が準備したのは点字の楽譜の一部である。視覚障害のある学生の高校の担任を交えての点字の講習会に参加した教官もいた。また、常時3人配置されているチューターは本人と同じ課程の学生である。
授業の方法としては、視覚を他の感覚(たとえば触覚)で補う方法をとれば理解に問題はないし、点字のテキストがあれば理論なども問題なく理解できる。前もって資料を準備したり、テキストを音読したりするなどのほか、レポートの提出期限を延期するという特別な配慮もしている。しかし、グループで行う授業のときなどは、様々な面で周囲に迷惑をかけるということを学生本人が気にかけており、やや消極的な面も見られた。音楽教育講座としては、物的な支援よりむしろ精神的な支援が必要だと感じており、廊下であったときも教官全員が声をかけるようにしている。
大学の対応について:入学前は他の人から「大変なことが多い」といわれていたが、大学側の対応は充分なものであった。パソコンや点字ブロック、授業を受ける際のサポートなど、設備や物品面のサポートにはいまのところ、改善してほしい点は見当たらない。「困ったことがあったり、何かあったら言ってください」といわれるが、いまのところ特に改善してもらいたい点は思いつかない。寮の生活も慣れてきた。
本学の他の学生の対応について:いままで、学内で自分に対して他の学生がとった対応で困った経験は、ほとんどない。急いでいる人に声をかけるとその人の迷惑になるかもしれないと思い、ついこちらが声をかけないままになってしまうことがあるといえばあるが、それは自分の側の問題だと考えている。
2002年2月12日、文部科学省メディア教育開発センター主催でSCS研修「高等教育に学ぶ障害者への配慮と学習支援」が実施された。参加した教育機関は本学を含め9つ。SCSを利用して、問題関心を共有する各地の大学を繋ぎ、障害を持つ学生が直面している問題やその解決策などを議論することを目的とした。SCSのテレビ会議システムは、移動困難な人には遠隔地の人々との交流を容易にし、聴覚や視覚に障害を持つ人には手話や音声をとおしてより自由なコミュニケーションを提供する。この研修では障害者への学習支援の問題を討議すると同時に、障害者にとってより有意義なSCSの活用法を模索した。その概要はWeb上に掲載しているので、そちらを参照頂きたい(http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~tomiohta/scs0202.htm)。来年度も3回、SCSを利用した研修を計画している。