T.日本と世界の障害者施策と障害児教育の動向
日本と世界の障害者施策と障害児教育の動向について、主要な事項を表1にまとめた。
表1.障害者施策と障害児教育に関する日本と世界の動向
日本の動向 世界の動向 年代 事項 年代 事項 1975 アメリカ合衆国,全障害児教育法 1978 特殊教育100年「明治11年盲教育開始」 1979 養護学校義務制 1981 国際障害者年 1981
英国,Special Educational Needs「特別な教育的ニーズ」という考え方 1983 国連,障害者の10年(1992まで)
−障害者に関する世界行動計画−1988 特殊教育110年 1993 障害者基本法および障害者対策に関する新長期計画 1993 アジア太平洋障害者の10年(2002まで) 1993
通級による指導開始 1993 国連,第48回総会決議「障害者機会均等実現に関する基準原則」 1994
ユネスコのサマランカ宣言
−統合教育からインクルージョンへ1994 韓国,特殊教育振興法と大統領令
−統合教育をめざす等−1995
障害者プラン
〜ノーマライゼーション7か年戦略〜1998 特殊教育120年 1999 学習障害等に関する報告 2000 交通バリアフリー法成立 2001 21世紀の特殊教育の在り方に関する最終報告(文部科学省) ・障害児を最も制限の少ない環境で教育する。
・統合教育をめざす。
・個別教育計画(Individualized Educational Plan,IEP)の設定が義務づけられている。
・障害という言葉からニーズという言葉への置き換えではない。
・障害児と健常児の間に決定的な境界線を引くことは難しい。両者は連続線上に存在し、個々の異なったニーズがある。
・子どもの教育課題や発達の遅れは、子どもの問題として内在するのではない。対応は、子どもを取り巻く環境を整備することからはじめるべきである。
・保護者は、自分の子どもに対して権利をもっているということが尊重されなければならない。
・早期教育の重要性をもつと認識すべきである。
・すべての青少年ができるかぎり充実し、独立した通常の生活をおくる権利がある。従って、通常の社会生活および学校生活に可能な限り統合をめざす権利がある。
・統合教育からインクルージョンへ。
・統合教育をめざす。
・個別教育計画を作成しなければならない。計画には親の合意が必要である。
・就学相談への親の参加と異議申し立て権が認められている。
・差別に対する罰則規定が設けられている。
・明治11年、盲教育が開始された。
・「障害者対策に関する新長期計画」は、アジア太平洋10年を受けて策定された。
・「障害者対策に関する新長期計画」は、障害者基本法の成立に先立って作成された。障害者基本法の成立を受けて、基本法の具体的計画として位置づけられた
・障害者対策推進本部が設置された。本部長は首相である。
・内容は広範囲にわたっているが、障害者の生涯学習が明記されている。
・国、都道府県および市町村は「障害者基本計画」を策定すること。
・内閣総理大臣は、障害者等の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
表2 障害者基本法第1章総則全文
(目的)
第1条
この法律は、障害者のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もつて障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的とする。(定義)
第2条
この法律において「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。(基本的理念)
第3条
すべて障害者は、個人の尊厳が重んせられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。2
すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。(国及び地方公共団体の責務)
第4条
国及び地方公共団体は、障害者の福祉を増進し、及び障害を予防する責務を有する。(国民の責務)
第5条
国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない。(自立への努力)
第6条
障害者は、その有する能力を活用することにより、進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない。
2
障害者の家庭にあつては、障害者の自立の促進に努めなければならない。(障害者の日)
第6条の2
国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めるため、障害者の日を設ける。
2
障害者の日は、12月9日とする。
3
国及び地方公共団体は、障害者の日の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。(施策の基本方針)
第7条
障害者の福祉に関する施策は、障害者の年齢並びに障害の種別及び程度に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施
されなければならない。第7条の2
政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害 の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進をずるため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならない。2
都道府県は、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における障害者の状況等を踏まえ、当該都道府県における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「都道府県障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。3
市町村は、障害者基本計画(都道府県障害者計画が策定されているときは、障害者基本計画及
び都道府県障害者計画)を基本とするとともに、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第4項の基本構想に即し、かつ、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。4
内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者の意見を代表すると認められる者並びに学識経験のある者の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。5
都道府県は、都道府県障害者計画を策定するに当たつては、地方障害者施策推進協議会の意見を聴かなければならない。地方障害者施策推進協議会を設置している市町村が市町村障害者計画を策定する場合においても、同様とする。6
政府は、障害者基本計画を策定したときは、これを国会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならない。7
都道府県又は市町村は、都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定したときは、その要旨を公表しなければならない。8
第4項及び第6項の規定は障害者基本計画の変更について、第9項及び前項の規定は都道府県障害者計画又は市町村障害者計画の変更について準用する。(法制上の措置等)
第8条
政府は、この法律の目的を達成するため、必 要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。(年次報告)
第9条
政府は、毎年、国会に、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を提出しなければならない。・就学猶予および就学免除が廃止された。
・盲学校および聾学校は早くから(時期を確認)義務制であった。
1)通級による指導とは
小・中学校の通常の学級に在籍している軽度の障害がある児童生徒に対して、各教科等の指導の大部分は通常の学級で行いつつ、障害に応じた特別の指導を特別の指導の場(いわゆる通級指導教室)で行う特殊教育の一形態である。
2)法的根拠
「学校教育法施行規則第73条の21」
「平成5年1月28日文初特第278号文部省初等中等教育局長通達」
3)通級による指導の対象となる障害
視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、身体虚弱、言語障害および情緒障害が対象となる。
4)設置の形態
通級指導教室は全ての通常の学校に設置されているわけではない。通級指導教室が設置されている学校に在籍する障害児の場合は自校通級、他校に設置されている通級指導教室に通級する場合は他校通級という。
5)意義
通常の学級に在籍している障害児に対して、初めて公式的に特別の教育的支援が開始されたという点で画期的である。
・障害者対策推進本部策定
・「障害者対策に関する新長期計画」の具体化
・各施策分野の推進方向
* 地域で共に生活するために
* 社会的自立を促進するために
* バリアフリー化を促進するために
* 生活の質(QOL)の向上を目指して
* 安全な暮らしを確保するために
* 心のバリアを取り除くために
注:「障害者基本法」がおおもとで「障害者対策に関する新長期計画」、「障害者プラン」へと具体的になっている。 注:県市町村における同様のプランも多々ある。
「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が施行された。
表3 21世紀の特殊教育の在り方に関する最終報告の目次
第1章 今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方 1 我が国の特殊教育の発展(略) 2 今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方 ○近年の特殊教育をめぐる状況の変化を踏まえ、これからの特殊教育は、障害のある幼児児童生徒の視点に立って一人一人のニーズを把握し、必要な支援を行うという考えに基づいて対応を図ることが必要。 ○今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方は次のとおり。 一.ノーマライゼーションの進展に向け、障害のある児童生徒の自立と社会参加を社会全体として、生涯にわたって支援することが必要、 二.教育、福祉、医療等が一体となって乳幼児期から学校卒業後まで障害のある子ども及びその保護者等に対する相談及び支援を行う体制を整備することが必要、 三.障害の重度・重複化や多様化を踏まえ、盲・聾・養護学校等における教育を充実するとともに、通常の学級の特別な教育的支援を必要とする児童生徒に積極的に対応することが必要、 四.児童生徒の特別な教育的ニーズを把握し、必要な教育的支援を行うため、就学指導の在り方を改善することが必要、 五.学校や地域における魅力と特色ある教育活動等を促進するため、特殊教育に関する制度を見直し、市町村や学校に対する支援を充実することが必要。 第2章 就学指導の在り方の改善について 1 乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備について 2 障害の程度に関する基準及び就学手続きの見直しについて ○盲・聾・養護学校に就学すべき障害の程度を定めた基準を見直すこと。また、市町村教育委員会が児童生徒の障害の種類、程度、小・中学校の施設・設備の状況等を総合的な観点から判断し、小・中学校において適切に教育を行うことができる合理的な理由がある特別な場合には、盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒であっても小・中学校に就学させることができるよう就学手続きを見直すこと。 3 就学指導委員会の役割の充実について ○審議に当たり保護者が意見表明する機会を設ける 第3章 特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応について 1 障害の状態等に応じた指導の充実方策 1-1 障害の重度・重複化や社会の変化に対応した指導の充実 1-2 学習障害、注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉等への教育的対応 ○通常の学級に在籍する学習障害児、ADHD児、高機能自閉症児等の実態を把握するため、全国的な調査を行い、その成果を踏まえ、教育関係者や国民一般に対し幅広い理解啓発に努める。 1-3 最新の情報技術(IT)を活用した指導の充実 2 特殊教育諸学校、特殊学級及び通級による指導の今後の在り方について 2-1 地域の特殊教育のセンターとしての特殊教育諸学校の機能の充実 2-2 特殊学級、通級による指導の今後の在り方について 3 後期中等教育機関への受入れの促進と障害のある者の生涯学習の支援について 第4章 特殊教育の改善・充実のための条件整備について 1 盲・聾・養護学校や特殊学級等における学級編制及び教職員配置について 2 特殊教育関係教職員の専門性の向上 2-1 特殊教育教諭免許状の保有率の向上及び今後の免許状の在り方について 2-2 研修の充実 3 特殊教育を推進するための条件整備について 4 国立特殊教育総合研究所の機能の充実 1949年、身体障害者福祉法が施行された。この法律によって、@身体障害者手帳の交付、A補装具の支給、B身体障害者更生援護施設の設置、C身体障害者相談所の設置等が定められた。しかし、この当時は、身体障害者の多くが戦傷者であり、対象者が身体障害者のみであり、知的障害者や精神障害者は考えられていなかった。
1950年代後半になると国民年金法の施行により障害年金・障害福祉年金が支給された。また、身体障害者雇用促進法が施行された。しかし、軽度の障害者に対するものであった。
1967年に身体障害者福祉法が改正された。この時代になって重度身体障害者が援助対象として位置づけられた。しかし、それらは「保護」概念にもたづいているものであり、重度障害者の施設入所主義の時代であった。
1980年代より福祉のまちづくりとして建築物の障壁除去について様々な取り組みが行われた。1981年には、国際障害者年(国連)を迎えた。これを受け、1982年に総理府により「障害者対策に関する長期計画」が策定された。これは、「ノーマライゼーション」の理念の下、「完全参加と平等」を目標としたものであった。
1993年には、アジア太平洋障害者の10年に取り組むため、「世界行動計画」に対応して、障害者の今後のあり方を示す「障害者に関する新長期計画(「障害者対策に関する長期計画」を改定)」が策定された。この中でバリアフリーに関する考えが大きく伸展し「4つの障壁」という考えが打ち出された。この計画の具体化を図るための重点施策実施計画として、1995年には「障害者プラン〜ノーマライゼーション7ヵ年戦略〜」が策定された。これは、保険福祉サービスの具体的な整備目標が定められるとともに、自由な社会参加を可能にするバリアフリーの促進を目指すものである。そして、『平成7年版 障害者白書』は初めて「バリアフリー社会を目指して」を副題として、@物理的、A制度的、B文化・情報面、C心、の4つの側面からバリアフリーを強調した。
2000年、政府は内閣に「バリアフリーに関する関係閣僚会議」を設置した。
バリアフリーデザイン」の推進は、1970年代に「私も外へ出たい」という重症心身障害者の願いから始まった「生活圏拡大運動」および「福祉のまちづくり運動」が原動力となった。厚生省も1973年に「心身障害者モデル都市事業」を創設以来、「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」(1994年)と発展させている。それは建設省や運輸省でも見られ、1994年には「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建設物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)が制定された。今やほぼ全ての各都道府県が「福祉のまちづくり条例」を制定している。
また、わが国の交通環境をめぐる状況は、急激な高齢化社会の進行により、1970年代のように身体障害者=少数者の問題ではなく多数者の問題となってきた。それは「福祉のまちづくり」および「ノーマライゼーション」の実現につながるからである。
「障害者白書(平成8年版)」を見れば「障害者の住みよいまちづくりのための施策」の移動・交通対策では、@公共交通機関における各種ガイドラインなどに基づく事業者の指導、A高齢者・障害者等の視点に立った連続性のある交通体系の計画的構築、B施設整備に対する支援体制の整備、C道路交通環境の改善、D公共交通機関周辺環境の利便性の向上、E障害者に対する運賃・料金割引等、F運転免許取得者希望者への配慮、G障害者、高齢者の旅行促進のための環境整備、という項目で解説しており、施策の広がりがわかる。
そして、2000年に「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が施行された。
表4 日本におけるバリアフリーの動向
時期 内 容 1949 ・身体障害者福祉法 1959 ・国民年金法の施行により、障害者年金・障害者福祉年金の支給 1960 ・身体障害者雇用促進法(軽度な身体障害者にたいするもの) 67 ・身体障害者福祉法改正 69 ・仙台市「障害者の生活拡大運動(まちづくり運動)」
・国際シンボルマークの制定1970 ・心身障害者対策基本法の制定
・手話奉仕員要請事業開始(厚生省)71 ・仙台市で障害者団体、ボランティアグループ、市民団体等からなる福祉のまちづくり市民の集いが発足(福祉のまちづくり運動のはじまり)
・町田市がまちづくりのための専門家グループと市民による懇談会を設置
・道路交通法の改正 [身体障害者用車いす通行者を歩行者とする]
・点訳奉仕員養成事業開始(厚生省)
・国鉄が盲導犬の無料同乗認める
*この頃から全国各地で車いす利用者の運動(生活圏拡大運動)が展開される72 ・日本初のリフト着きバス(東京都町田市) 73 ・「歩道及び立体横断施設の構造について」を通知(建設省)
・「官庁営繕の身体障害者に対する暫定処置について」を通知(建設省)
・「身体障害者モデル都市事業」を創設(厚生省)(国の福祉のまちづくりの最初)
・国鉄上野駅に車いす用個室トイレ設置および改札口拡張
・国鉄高田馬場駅に「点字運賃表」設置
・東京の国電中央線にシルバーシート登場74 ・町田市「建築物等に関する福祉環境整備要綱」を制定(全国で初めての指導要綱) ・車いす利用者用公衆電話ボックス導入(電電公社)
・国連「障害者生活環境専門家会議」がバリアフリーデザイン(建築上障壁のない設計)の報告書をまとめる
・テレビ放送における手話放送を開始(郵政省)
・道路交通法施行規則改正 [運転免許の適性試験で補聴器の使用を認める]
・新幹線「ひかり」に車いす用の席を設置75 ・福祉電話機の開発(電電公社)
・「官庁営繕の身体障害者等に対する暫定処置について」を通知(建設省)
・心身障害者団体の発行する定期刊行物に対する郵送料の優遇措置
・大型の点字書籍の郵送料の優遇措置76 ・身体障害者雇用促進法の改正
障害者の雇用率⇒「努力義務」から「雇用義務」へ
・京都市「福祉のまちづくりのための建築物環境整備要綱」を策定
・視覚障害者用信号機の全国統一化(警察庁)
音の出る信号機は昭和30年に杉並区東田町で初めて設置77 ・神戸市「市民の福祉を守る条例」を制定(条例としては全国で初めて)
・「官庁営繕における身体障害者等の利用に関する措置」を通知(建設省)78 ・駐車禁止除外指定者標章の交付を受けた車両については全国的に駐車禁止規制の対象から除外(警察庁)
・道路交通法改正 [盲導犬利用者は道路を通行可、この場合の車両運転者に対する一時停止又は徐行の義務を規定]
・受話器音量拡大「めいりょう」の公衆電話の導入(電電公社)79 ・「障害者福祉都市」推進事業を創設(厚生省)
・郵便貯金周知宣伝施設に身体障害者用設備を設置(郵政省)
・既設郵便局舎の窓口ロビー出入り口の段差解消等(郵政省)1980 ・住宅分野では初めて「高齢者・身体障害者ケアシステム技術の開発」を開始(通
産省)
・「国際障害者分類施策(ICIDH)」発表(WHO:世界保健機構)
障害を機能障害、能力低下、社会的不利の3つのレベルに区分81 ―国際障害者年―
・「障害に関する用語の整理のための医師法等の一部を改正する法律」の公布
・「官庁営繕における身体障害者の利用を考慮した設計指針」を作成(建設省)
・簡易保険加入者福祉施設に身体障害者用設備を設置(郵政省)
・「身体障害者の利用を考慮した設計建築標準」作成(日本建築士連合会)
・公共交通機関では初めて京都市営地下鉄がバリアフリーに取り組む82 ・国連総会で「障害者に関する世界行動計画」の実施採択
「国連・障害者の十年」宣言
・「障害に関する用語の整理に関する法律」の公布
・「障害者対策に関する長期計画」を策定(障害者対策推進本部)
・兵庫県加古川市「福祉コミュニティ条例」を制定
・「身体障害者の利用を配慮した建築設計標準」を策定(建設省)
・道路交通法施行令改正 [身体の障害に係る運転免許の欠格事由の見直し]
・テレホンカード式公衆電話導入(電電公社)
・公衆電話の「ダイヤル数字5にポッチ」を入れる(電電公社)
・テレビ放送における解説放送を開始(郵政省)83 ―「国連・障害者の十年」開始年― 目標:「完全参加と平等」
・「障害者対策に関する長期計画」策定(国際障害者年推進本部)
・「公共交通ターミナルにおける身体障害者用施設設備ガイドライン」を策定(運輸 省)
・定額郵便貯金等の点字による貯金内容通知(郵政省)84 ・身体障害者福祉法の改正
・氏名を点字表示した郵便貯金点字キャッシュカード発行(郵政省)
・「視覚障害者用現金自動支払機(CD)・現金自動預払機(ATM)」設置(郵政省)
・点字による簡易保険契約内容の送付開始(郵政省)
・兵庫県警察でファックス110番開設
・紙幣に視覚障害者のための識別マーク採用(大蔵省)85 ・テレビ放送における字幕放送を開始(郵政省)
・「視覚障害者誘導用ブロック設置指針」を作成(建設省)
・テレホンカードに切り込みを採用(NTT)
・郵便ポストの取集時刻表示板等に点字表示開始(郵政省)86 ・「障害者の住みよいまちづくり」事業創設(厚生省)
・障害者基礎年金の支給
・点字による通常郵便貯金の取扱内容の送付(郵政省)
・「長寿社会対策大綱」制定87 ―「国連・障害者の十年」中間年―
・「『障害者対策に関する長期計画』後期重点施策」を策定(障害者対策推進本部)
・公衆電話のカード返却時の音声ガイダンスやカード返却音を導入(NTT)
・公衆電話のテレホンカード・硬貨投入口を点字で表示(NTT)
・障害者雇用促進法の制定(身体障害者雇用促進法の改正)88 ・「高齢者の交通安全総合対策」 89 ・高齢者保険推進十か年戦略(ゴールドプラン)策定
・手話通訳者の厚生大臣認定制度発足(厚生省)
・聴覚障害者の福祉を増進することを目的とする施設が聴覚障害者に貸し出すビデオ テープに対する郵送料の優遇措置(郵政省)1990 ・障害のあるアメリカ人法(ADA)制定(包括的な障害者差別禁止法)
第1章 有資格の障害者に対する雇用差別の禁止を規定
第2章 公的サービスにあげる差別禁止を規定
第3章 公的施設における差別禁止を規定
⇒日本の「福祉のまちづくり」に大きな影響
第4章 電気通信リレーサービスについて規定・「住みよい福祉のまちづくり」事業創設(厚生省)
・「ゴールドプラン」スタート
・「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」 を策定(運輸省)
・「情報処理機器アクセシビリティ指針」を作成(通商産業省)
・目の不自由な人のための郵便葉書の発行(郵政省)
・点字による簡易保険満期案内書等の送付開始(郵政省)
・NHK教育TVで手話ニュース放送開始91 ・「福祉の街づくりモデル事業」を創設(建設省)
・「地域福祉推進特別対策事業」を創設(自治省・厚生省)
・「鉄道駅におけるエスカレーター整備指針」を策定(運輸省)
・弱者感応式信号機を設置(警察庁)
・点字による定額定期郵便貯金の満期案内の送付(郵政省)
・点字のできる職員の養成を開始(郵政省)92 ―「国連・障害者の十年」最終年―
・兵庫県および大阪府が「福祉のまちづくり条例」を制定
・道路交通法等改正 [身体障害者用の車いすを定義、原動機を用いた身体障害者用車いすの型式認定制度を創設]
・「人に優しい建築物整備促進事業」を創設(建設省)
・「点字不在配達通知カード」を使用(郵政省)
・「点字内容証明郵便」の取扱い開始(郵政省)
・手話のできる職員の養成を開始(郵政省)
・「今後の高齢者の交通安全の推進について」93 ・「障害者対策に関する新長期計画」を策定(障害者対策推進本部)⇒4つの障壁
・「心身障害者対策基本法」から「障害者基本法」への改正・公布
・国連総会「障害者の機会均等化に関する標準規則」採択
・「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」の制定
・「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に 関する法律」の制定
・「高齢者・障害者等のためのモデル交通計画」の策定・検討 [1993年度から3か年](運輸省)
・「鉄道駅におけるエレベーターの整備指針」を策定(運輸省)
・「まほろばの川づくりモデル事業」を創設(建設省)
・大阪府警察で手話交番第1号を開設
・「山梨県障害者幸住条例」を制定
・電動車いす用公衆電話ボックスを導入(NTT)
・東京都町田市が「福祉のまちづくり総合推進条例」を制定94 ・日本初の『障害者白書』 ⇒障害者基本法第9条に基づく
・「障害者のために濃い自他施策の概況に関する年次報告書」として国会に報告
・「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」を創設(厚生省)
・「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)」の制定
・「人にやさしいまちづくり事業」を創設(建設省)
・「交通施設利用円滑化対策費補助金」の創設(運輸省)
・「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」 を策定(運輸省)
・「みんなが使いやすい空港旅客施設新整備指針(計画ガイドライン)」を策定(運輸 省)
・「生活福祉空間づくり大綱」を策定(建設省)
・今後の子育て支援のための基本的方向について(エンゼルプラン)策定
・「新ゴールドプラン」策定
・身体障害者向け通信・放送サービスに関する情報提供を実施(郵政省)
・通帳等に貯金の種類を点字表示したシールをちょう付(郵政省)
・点字版・拡大版「郵便貯金のご案内」の配備(郵政省)
・都道府県警察で手話バッジを導入(警察庁)
・「学校施設等における高齢者、障害者等の円滑に利用できる建築物の建築の促進に ついて」を通知(文部省)
・愛知県および滋賀県が「まちづくり条例」を制定
・東京都狛江市が「福祉基本条例」を制定95
・各都府県で「福祉のまちづくり条例」(高齢者・障害者等が円滑に利用できる施設の整備とサービスの向上を図るための条例)を制定 [東京都、京都府、神奈川県、大分県、広島県、熊本県、福島県、埼玉県、奈良県、長野県]
・『平成7年版障害者白書』がはじめて「バリアフリー社会をめざして」をテーマにする(総理府)
・『障害者プラン〜ノーマライゼーション7ヵ年戦略〜』策定
・「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」
・「市町村障害者策定指針」通知
・「長寿社会対応住宅設計指針」(建設省)
・「高齢社会対策基本法施行」96 ・高齢社会対策大綱
・「年金バリアフリー住宅融資制度」スタート
・住宅金融公庫の「バリアフリータイプ」導入97 ・長崎県福祉のまちづくり条例公布
・学際的な「福祉のまちづくり研究会」設立
・「高齢社会対応型製品ガイドライン」を策定(通産省)
・「グッド・デザイン賞」の中に、「ユニバーサルデザイン賞」を新たに創設(通産省)
・宗像市障害者施策推進計画策定98 ・福祉のまちづくり研究会第1回全国大会(東京都)
・『平成10年版障害者白書』が「情報のバリアフリー社会の構築に向けて」をテーマにする99 ・国際高齢者年
・福祉のまちづくり研究会第2回全国大会(神戸市)
・「高齢者・障害者による情報通信の利用に対する人的支援及びウェブアクセシビリティの確保に向けた課題と方策」「情報通信の利用支援技術の普及推進とインターネットのアクセシビリティ確保」(郵政省)
・宗像市人にやさしいまちづくり整備基本計画2000 ・「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」公布
・「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」(通商産業)の改正
・各企業で、ATM券売機、家電製品等について、ユニバーサルデザインに基づいた開発が行われるようになる
・IT戦略会議に「情報バリアフリーの推進について」という項目が盛り込まれ、ホームページのアクセシビリティについて取り組みを進める内容を記載
・『平成7年版障害者白書 バリアフリー社会をめざして』(総理府編集、大蔵省印刷 局発行、1995)これまで障害者は様々な面で社会への参加を制限されてきている。その一つに「障害者を職業などから除外する欠格条項のある法律」の存在がある。これは、本稿の「4.日本のバリアフリー施策に関する動向」で述べた「制度的バリアー」に相当する。本稿の「3.日本における障害者施策と障害児教育の動向に関する主な事項の説明」の「(2)障害者基本法および障害者対策に関する新長期計画(1993)」でとりあげた「障害者対策に関する新長期計画」の一環として、政府はこれらの欠格条項の撤廃や緩和を進めている。また、日本弁護士連合会は、表5のような意見書をホームページに掲載して、障害者の人権の尊重と社会への完全参加の実現などを訴えている。
表5 日本弁護士連合会による障害者欠格条項の撤廃を求める意見書(アンダーラインは、大学に直接関係する部分および障害者の社会参加等に関する文言について筆者が行った)
障害者欠格条項の撤廃を求める意見書
2000年11月
日本弁護士連合会意見の趣旨
医師法・薬剤師法・道路交通法など、資格・免許等の欠格事由として身体又は精神の障害を掲げている法令の規定(以下「欠格条項」という。)の多くは、憲法13条(幸福追求権)、14条(法の下の平等)、22条(職業選択の自由)に違反し、かつ、国連の障害者の権利宣言外の諸決議や障害者基本法の謳う障害者の完全参加と平等の理念に明らかに反するものであり、障害者の社会参加と自己実現の途を法律によって入口で閉ざし、障害者の人権を侵害するものである。政府は現在欠格条項の見直し作業中であり、平成12年6月1日時点で存在する60制度中35制度については平成12年度中に作業終了の予定であるが、当連合会は政府に対し、見直しにあたり、補助機具の進歩・手話通訳等の補助者やサポート体制の整備・健常者との協働の促進・医学の発達等を踏まえ、障害者の人権を尊重し完全参加と平等を推進すべく 第1、
@機能障害・病気を理由とする絶対的及び相対的欠格条項は原則として廃止すること。
A実技を含む資格試験等で判定可能なものは資格試験等で判定すること。
B資格試験については、障害者にとって欠格条項に代わる新たな障壁とならないように、点字受験や、口述受験における受験者の障害に応じた通訳の保障、口述に代わる筆談による試験の実施等、格別の配慮をすること。
C一定の資格制限規定がどうしても必要なものは、機能障害・病気ではなく、「具体的に要求される能力や技能」で規定すること。
D能力が回復したり、補助機器等の進歩活用により能力を補うことが可能になった場合の、資格回復規定を設けること。
E資格を与えない場合、または取り消す場合は、本人の主張を聞いたり、不服申立を認める制度を設けること。第2、薬剤師国家試験に合格しながら、聴覚障害を理由に薬剤師免許を与えられない者に対し、直ちに該当者に免許を与えることができるよう、必要な法的措置を講ずること。 第3、大学等の教育の場が、受験・教育の点で障害者に開かれたものとなっておらず、障害者の資格取得・社会参加の事実上の障壁となっていることについても、すみやかに改善に着手すること。
を求めるものである。意見の理由
1、障害者の権利宣言・憲法14条等と資格制限
国連の障害者の権利宣言は、「障害者が人間としての尊厳を尊重される生まれながらの権利を有すること」「障害者が他の人々と同じ市民的・政治的権利を有すること」「その能力に応じて雇用され、差別的なあらゆる搾取、規制から保護されること」を謳っている。また、国連の障害者に関する行動計画(1982年)等の諸決議は、障害者の社会生活における完全参加と平等をめざし、その障壁や阻害要因を除去する責任が政府にあることを定めている。 さらに我が国の憲法14条は「すべて国民は法の下に平等であって、・・・・経済的又は社会的関係において差別されない。」と規定している。 そして、障害者基本法は、完全参加と平等を基本理念・目的とし、政府がそのために必要な法制上の措置を講じなければならないと定めている。 しかるに、医師法、薬剤師法、道路交通法をはじめとする多くの法律において、身体又は精神の障害を理由として障害者の資格取得が制限されてきた。これらは、古い障害者観に基づき「危険防止」・「業務困難」等の理由で「合理性のある制限」との解釈のもと、今日まで全く見直しがなされてこなかった。 その結果、手話通訳等の補助者・サポート体制の整備・点字・拡大機、コンピューター機器等の補助器具のめざましい進歩並びに医学の発達により、十分に業務遂行が可能である、あるいは業務にあたって特段の危険がないと思われる場合にあっても、画一的に資格取得が制限され、障害者の社会参加・自己実現が阻まれてきた。 子供の頃からの夢をかなえるため一生懸命勉強して大学を卒業し、薬剤師国家試験に合格しても、聴覚障害を理由に薬剤師免許を得られない後藤久美さんや、欠格条項がなければ医師や薬剤師をめざしたかったという筑波技術短期大学の学生の、障害者の人権を考えるシンポジウム(日弁連外主催。平成12年10月21日・於クレオ)における発言を聞くとき、障害を理由に社会への参加の途を入り口で閉ざしているこのような欠格条項は、障害者の幸せになる権利や夢を奪うものであり、憲法13条(幸福追求権)、14条(法の下の平等)、22条(職業選択の自由)に違反し、障害者の人権を侵害するもであると断ぜざるを得ない。 そして欠格条項は同時に、かけがえのない一人の障害者とその能力や可能性を受け入れることができないという点で、社会に大きな損失を与え、社会をも貧困なものにしていると言えるであろう。 2、政府の欠格条項見直しについて
総理府の障害者施策推進本部は、ようやく平成11年8月9日、「障害者に係る欠格条項の見直しについて」を決定し、欠格条項が真に必要であるか否かを再検討し、必要性の薄いものについては欠格条項を廃止することとし、真に必要と認められる場合の具体的対処方針を明らかにした。対処の方向は、@欠格・制限等の対象の厳密な規定への改正
A絶対的欠格から相対的欠格への改正
B障害者を表す規定から障害者を特定しない規定への改正
C資格・免許等の回復規定の明確化
である。さらに、総理府は平成12年6月1日に対象63制度の見直しの進捗状況を発表したが、それによると、検察審査員、栄養士免許、一般労働者の就業禁止の3制度の欠格条項が廃止され、残る60制度中35制度が平成12年度中に見直し終了予定とのことである。 政府がおくればせながら欠格条項の包括的見直しに着手した意義は大変大きいが、当連合会は政府に対し前述した総理府の対処の方向にとどまることなく、 @機能障害・病気を理由とする絶対的及び相対的欠格条項は原則として廃止すること。 A実技を含む資格試験等で判定可能なものは資格試験等で判定すること。 B資格試験については、障害者にとって欠格条項に代わる新たな障壁とならないように、点字受験や口述試験における手話通訳の保障や口述に代わる筆談による試験の実施等、格別の配慮をすること。 C一定の資格制限規定がどうしても必要なものは、機能障害・病気ではなく、「具体的に要求される能力や技能」で規定すること。 D能力が回復したり、補助機器等の進歩活用により能力を補うことが可能となった場合の、資格回復規定を設けること。 E資格を与えない場合、または取り消す場合には、本人の主張を聞いたり、不服申立認める制度を設けることを求めるものである。 3、事実上の資格制限
前述したシンポジウムにおいて、障害を持つ青少年がいかに将来に夢を抱き、能力と意欲を持っていても、欠格条項があるがゆえに、高校や大学の進路選択の段階で、医師等を目指すことを最初から断念せざるをえない現実が報告された。さらには、点字等による受験が認められないため、欠格条項がないにもかかわらず受験自体を断念せざるをえない現実についても報告があった。大学等の教育の場が、受験・教育の点で障害者に開かれたものとはなっていないのである。また、欠格条項はないにもかかわらず、例えば聴覚障害者は保育士試験において音楽の試験を課されることによって事実上保育士の資格を取得できないという現実もある。このような事実上の資格制限は他にもたくさん見られる。欠格条項の見直しにあたっては、このような事実上の資格制限や障壁をも撤廃していく必要がある。4、今後の取り組み
欠格条項をはじめとする差別法規の撤廃は、全障害者の願いであり、差別法規撤廃の署名運動に対し、200万人を超える国民が賛同署名をし、 全国の1000以上の地方議会において改正意見書が採択されている。又、昨年来、この問題をマスコミも積極的に取り上げて報道している。日本薬剤師会も国家試験合格者を差別すべきではないとして、後藤久美さんに免許を与えることを求めている。まさに世論が欠格条項の撤廃を求めているのである。当連合会は、政府に対し、前述したシンポジウムでの議論、各障害者団体からの要望を十分考慮し、人権の世紀と言われる21世紀に向けて、欠格条項・資格制限の早期撤廃を実現するよう強く求めるものである。 特に、障害者福祉の所管官庁である厚生省には、率先して欠格条項を撤廃するよう、また薬剤師国家試験に合格しながら聴覚障害を理由に薬剤師免許を得られない者に免許を与えるよう、直ちに必要な法的措置を講ずることを求めるものである。 本年9月に来日された米国のろう者の医師キャロリン・スターンさんは、「アメリカには欠格条項はありません。そんな許せない法律は変えればいいのです。アメリカでは障害を持つアメリカ人のための法律(ADA)により差別は禁止されています」と発言されている。 当連合会は、市民と力を合わせ、薬剤師会・医師会等の関係団体とも協力し、法律を変えるため、そして、更にはアメリカのADAのような差別禁止法を制定することを目指して、今後とも全力を尽くす決意である。
以 上教員養成大学としての福岡教育大学に直接関係する事柄としては、障害者と教員採用に関する事柄がある。1979年には、民法が改正されて、「準禁治産者の定義から聾者、唖者、盲者の文言が削除」された。このことによって、盲者および聾者も教員になれる道が開かれた。このことについて、関係法律を取りあげて具体的に論じてみる。
学校教育と教員採用に関係する法律としては、教育基本法、学校教育法、教育公務員特例法および教育職員免許法がある。この中で、教員免許状の授与を制限する条項として第5条があり、その三として「成年被後見人又は成年被保佐人」がある。また、教員免許状および教員採用と関係ある法律としては、国家公務員法第38条に欠格条項として、「成年被後見人又は成年被保佐人」の項がある。地方公務員法第16条に欠格条項として、「成年被後見人又は成年被保佐人」の項がある。
「成年被後見人又は成年被保佐人」について、簡単に解説する。1999年の民法改正で、従来の「禁治産者・準禁治産者」の制度が廃止され、第7条から第20条にわたって「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」の制度が新設された。成年被後見人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く者とされている。被保佐人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分な者とされている。被補助人(新設)とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分な者とされている。それぞれに保護の役割を果たす者として、(成年)後見人、保佐人あるいは補助人がつくこととされている。この成年後見制度は、「痴呆性高齢者」、「知的障害者」、「精神障害者」など、判断能力の不十分な人々の保護と支援をする目的としている。保護と支援を要する具体的な内容として、財産管理、介護、施設への入退所などの生活についての契約や法律行為があげられる。
このように成年後見制度は保護と支援を目的として設定されている。しかし、国家公務員法、地方公務員法、教育職員免許法等の他の法律との関係で、「成年被後見人」「被保佐人」である障害者が公務員として社会参加することを制限することになっている。公立学校の教員は地方公務員であるため、「成年被後見人」「被保佐人」は公立学校教員としての採用されることはない。また、採用以前の問題として、「成年被後見人」「被保佐人」は、教育職員免許法第5条の三により教員免許状の取得ができない。
既に述べたように、1979年の民法改正により「準禁治産者(被保佐人)の定義から聾者、唖者、盲者の文言が削除」されたことにより、盲者および聾者も教員免許状の取得および地方公務員としての教員採用も制限されていない。実際に視覚障害者や聴覚障害者が教員として採用された例も見られる。このように制度上のバリアーはほぼ撤廃されているが、現実には様々な形でのバリアーが存在しているようである。例えば、教員採用試験において色覚異常の検査が行われている例がある。受験者は検査を受けるように告げられてショックを受ける。また、不合格になった場合に、色覚異常によって不合格になったのではないかと疑念をいだく。このような事例が実際に見られるのである。法的な根拠なしに、潜在的な形で障害者が教員として社会参加することを制限している状況を改善していく必要がある。
表6 教育職員免許法第5条
第5条
普通免許状は、別表第1若しくは第2に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第1若しくは第2に定める単位を修得した者又は教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号の一に該当する者には、授与しない。
一 18歳未満の者
二 高等学校を卒業しない者(通常の課程以外の課程におけるこれに相当するものを修了しない者を含む。)。ただし、文部大臣において高等学校を卒業した者と同等以上の資格を有すると認めた者を除く。
三 成年被後見人又は成年被保佐人
四 禁錮以上の刑に処せられた者
五 免許状取上げの処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
六 日本国憲法施行の日[昭和22年5月3日]以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者。なお、色覚異常ということばについても問題がある。インターネットで次のような記述のあるホームページを見つけた。「私たちが普段何気なく見ている色。その色が違って見える人がいるのをご存じですか?私のように『色覚異常者』と呼ばれる人たちのことです。『異常者』というのはなんだかいやな響きです。生まれつきの異常で治らないので『異常者』レッテルを貼られています。私は『第2色覚異常第3度』と診断されました。割と強度の異常らしいです。でも実際『色覚異常』とは何なんだろう。他人がどんな色を見ているのかは誰にもわからないのに。私自身今まであまり考えてこなかったし、同病の人とのつながりもなかった。社会で色を使う人たちもあまり考えてくれていないみたいで困ることが多いのに。そんなときに天からインターネットが降ってきたのです。みんな意見を言い始めました。そこで私もホームページを作ってみました。」(引用:http://www.kisweb.ne.jp/personal/tksn/color/)。既に述べたように、法律・制度上では様々な形で障害者の社会参加を制限してきたバリアが取り除かれつつあるが、制度上だけでなく、多面的に障害者の完全な社会参加の推進を進める必要を感じている。