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平成28年度卒業式 式辞(平成29年3月24日)

  平成二十八年度の卒業式、修了式にあたり、卒業生ならびに修了生の皆さんに福岡教育
大学の教職員に代わりまして、お慶びを申し上げます。おめでとうございます。
 同時に、学生の皆様を今日までささえてこられました、ご家族の方々に対して、お祝い
を申し上げますとともに、卒業生および修了生の皆様の栄えある前途を祝福するために、
ご臨席を賜りました、ご来賓の皆様にも厚くお礼を申し上げます。

 本日ご卒業される方々は、福岡教育大学教育学部、大学院教育学研究科、特別支援教育
特別専攻科、そして教員研修留学生の皆さんです。それぞれの所属に応じて、本学で過ご
されました期間には違いがございますが、本学での学びはいかがでしたでしょうか。それ
ぞれの学びの中で、多くの知識を獲得されたことでしょう。また、かけがえのない仲間と
も出会われたことでしょう。恩師と呼ぶべき先生やいろいろな人とも巡り合えたのではな
いでしょうか。ここで得られたものを大切にして、力強く社会に羽ばたかれることを、心
より祈念いたします。

 これから皆さんは、いろいろな場で、教育にかかわって生きていかれることでしょう。
教育に、より良くかかわり続けるためには、新しい知識を得る学びを続けることが必要と
なります。
 しかしながら、知識そのものには、ほとんど価値がないのではないかと私は思っていま
す。知識のもつ価値は、知識を受け取った側に生まれるものだと思うのです。そして、そ
の価値は、受け取った人により異なっていると思うのです。今日ここには、731名の卒
業生と修了生がいます。皆さんが、例え同じことを学んだとしても、それぞれに、異なる
価値を生み、あわせて731もの価値を生んでいるのです。
 加えて、知識は人々に共有されることにより、その価値が飛躍的に増幅されるのです。

 ここで、一つ大切な事実を忘れてはいけません。それは、知識のすべてが人々を幸福に
する価値をもつとは限らない、ということです。例えば、インターネット等で共有された
知識の中には、誤ったもの、敵意に満ち溢れたものもあります。
 悪意は共有されることにより、大きな害をおよぼすことになります。いじめもその一つ
の例でしょう。情報が溢れる社会の中で、皆さんは自らの頭で情報の適否を判断をする必
要があります。その判断力は、学びを通してのみ、磨き上げることができるのです。

 知識は人格に宿るとした、一ノ瀬正樹氏による知識の獲得について、紹介しましょう。

 知識を獲得するためには、努力や探求が必要です。知識は、何かに対して疑問を抱き、
問いを向け、解明していこうとする「努力や探求の行為」によって成立します。「知る」
というのはぼんやりと佇んで居るだけで達成されるものではありません。ただし、努力や
探求は進行過程であり、何かを確立するものではありません。
 知識は「これはこういう事である。」と「同意したり決定したりする行為」によって成
立します。この行為によって、知識が獲得されるのです。知識を獲得する「誰か」はすぐ
れて人格でなくてはなりません。

 繰り返しますが、本学で皆さんが手にされました知識と、人の輪である「人的ネットワ
ーク」を、広く教育に、そして、社会のために活用してください。また、皆さんにはその
義務があるということも、どうぞ忘れないでください。

 最後に、ロシアの数学者である、ポントリャーギンの話をします。彼は、1908年に生ま
れ、微分方程式や微分幾何学でその才能をいかんなく発揮し、1988年に80歳で亡くなりま
した。彼の業績に対して、レーニン賞をはじめ、多くの賞が与えられています。
 ポントリャーギンは、大変貧しい家庭に育ち、十四歳のとき、ストーブの爆発事故で失
明しています。しかし、目が見えない彼に代わり、母親が英語を学び、数学の専門書を読
み聞かせ、数学の学びを助けたといわれています。彼の本は、何れも名著と評判が高く、
とても読みやすく書かれています。
 さて、皆さんにポントリャーギンのことを紹介したのは、彼が才能に恵まれていたとい
うことを話したかったからではありません。彼の才能をもってすれば、彼の業績は、当然
のものかもしれません。お伝えしたかったことは、彼は絶望的とも思える苦難の中でも、
見事に、自らの才能を開花させたということなのです。

 ポントリャーギンの努力、同時に彼を支えた母親と、彼を数学に導いた恩師や仲間に恵
まれた幸運に目を向けていただきたいのです。自らの努力と支えてくれる人々の存在こそ
が、困難に対する一番の解決法であると思います。

 これからも多くの困難が皆さんを待ち受けていることでしょう。そのようなとき、本学
で学んだことが生かされることがあれば幸いです。必要があれば遠慮なく、再び本学を訪
ねてください。皆さんのネットワークの中に、福岡教育大学があることを決して忘れない
でいただきたい。皆さんの課題の解決に、本学がかかわることができれば、望外の幸せで
す。

 卒業生、修了生の皆様が、希望に満ちた人生をしっかりと歩んで行かれることを祈念し
て、式辞といたします。

             平成29年3月24日
                                     福岡教育大学長
                                     櫻 井  孝 俊 

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